とある学園の死闘遊戯 罪

□第04話 成分
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 一方通行は、白井と共に美琴の部屋を訪れていた。

 入院生活を続けていたため、この場所には最近の生活感が見られない。

 白井がいる分、まったく見られないわけではないが、美琴に私物には動かされた気配はなかった。

白井黒子「まぁ、毎日わたくしが清潔さを保ってはいますの。埃などは窺えないでしょうけど……」

一方通行「構わねェよ。俺が見てェのはそこじゃねェ」

 一方通行は、美琴が持っていた数少ない香水の全てを手に取っていた。

 一本一本手に取って、同じように匂いを嗅いでいく。

白井黒子「ところで、先ほどのお電話は土御門さんですの?」

一方通行「だったらどォした?」

白井黒子「…………」

 香水を調べていた一方通行の手を、白井が掴み取った。

 白井へと目を向けると、その視線には真剣な様子が映っていた。

白井黒子「わたくしにもメールは届いていますわ。成分が判明した以上、問いただしたのでは?」

一方通行「…………」

 一方通行が無言であることから、白井は図星だと判断した。

白井黒子「でしたら、わたくしにも教えてくださいな。貴方はお忘れなのか、それとも認識できていないのかもしれませんが」



白井黒子「白井黒子は風紀委員であると同時に、新生グループの構成員。貴方を全力で支援する、仲間の一員ですわ」



 新生グループの構成員。

 学園都市に不在だった一方通行は、新生グループの面子を認識していなかったのだろうか。

 もちろん、そんなことはない。

 ただ、誰も巻き込みたくないと奮闘していた時期があまりにも長すぎたため。

 一方通行は仲間が増えている事実に、少しばかり動揺しているのかもしれない。

一方通行「………はァ…、分かった。教えてやるから手ェ離せ」

白井黒子「はい?」

 気が付けば、白井は一方通行の手を掴んだまま詰め寄っていた。

 そして、そんな状況の時に限って第二波がやってくる。

花一籠目「し、失礼します……。何かお手伝いでき、た…ら……」

 第三者から見れば、男性の手を掴み取って詰め寄っている女性の姿は、どのように映るか言うまでもない。

花一籠目「ーーーッ!? あ、あのッ。ごめんなさい、失礼しましたぁ!」

白井黒子「お待ちなさい! 誤解ですの!! 弁解をさせてくださいまし〜ッ!!」

 ドアを勢いよく閉めて走り出す花一を、白井が空間移動で追いかける。

 追いかけっこで白井に勝てる者は少ないだろうが、場所はマズかったらしい。

白井黒子『はうわッ!! 寮監さま、お待ちになってくださいまし! これには海よりも深い事情が!!』

 問答無用ッ!! という寮監の返答と同時に、何かが打ちのめされる音が廊下に響いた。

 常盤台中学学生寮は、能力の発動を禁止している。

花一籠目『し、白井さ〜ん! 大丈夫ですかぁ!!』

白井黒子『はッ! あ、あれは桃源郷……。お姉様が、お迎えに……』

花一籠目『御坂様は死んでません! 白井さ〜ん! 戻ってきてくださ〜い!!』

一方通行「………なンか馬鹿らしくなってきたのは気のせいか?」







 白井が、寮監に一方通行(統括理事長)を無断で入れた言い訳(もちろん捏造)を話している間に、一方通行と花一は外に出ていた。

 白井が出てくるまでの間、一方通行は花一から、白井との関係や、どう思っているのか、どう思われているのか、などを必死に問われていた。

 全部あっさりと返しておいたが、一方通行が話したことに偽りはない。

 新生グループの一員であり、それなりに頼れる仲間の一人であり、それ以上も以下もないと告げた時、花一は何故かホッとした様子を見せたという。

 白井が戻って三人が揃ったため、リフレクトパークを目指してバスに乗り込んだ。

白井黒子「ふぅ、ようやく落ち着きましたわ」

一方通行「ったく、面倒な騒動起こしやがって」

白井黒子「好きで起こしたわけではありませんの!」

 白井を中心に、右側に一方通行、左側に花一を座らせた最後列の座席。

 次の会話から、事件内容を話すため空気を切り替える。
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