とある学園の死闘遊戯 罪
□第05話 誘惑
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海原が反応したのは、垣根の言葉だった。
海原光貴「“進展か行き詰まりか”と言いますと、まだ進展の兆しが?」
垣根帝督「……“キラー”の店裏に回って、例の香水の品出し状況を調べたのさ。そこら辺で扱ってる商品を開封して盛ってるのか、何処からか仕入れた物を商品として売ってるのか、ってのをな」
土御門元春「結果は?」
垣根帝督「店内にも店裏にも、モルヒネやヘロインどころか、ガラナすら見当たらなかった。完全に白だ」
ここで、海原が口を開いた。
海原光貴「“ダイヤ”の件については、自分が新情報を入手しました。紛失の原因です」
土御門や一方通行は既に聞いているらしく、海原は垣根にだけ話しかけてきた。
現状を認識するためにも、垣根は耳を傾ける。
垣根帝督「原因は?」
海原光貴「何者かによる強奪。つまり、大量のナノカプセル“ダイヤ”は、盗まれてしまったそうなのです」
正直に言って、ダイヤの強奪事件と女性失踪事件は線で結ぶことが出来ない。
ガラナ成分や麻薬の配合に使われた可能性も捨てきれないが、あくまで想像の域を出ない。
それに、ダイヤは素粒子用のカプセルなのだ。
常人が簡単に扱えるものではない。
一方通行「…………」
土御門元春「……一方通行?」
遺体の様子を調べているのかと思っていたが、一方通行は別の方へと視線を向けていた。
遺体よりも少し離れた場所に、真新しい靴跡があった。
一方通行「この男のモンじゃねェな……」
海原光貴「誰かに見られていて、目撃者が逃走したのでは?」
垣根帝督「それはねえな。表はツインテールが一般人を避難させてた。仮に見られていたとしたら、表に立ってた風紀委員に声を掛けるはずだ」
土御門元春「つまり、この足跡が遺体の主じゃないっていうなら……」
土御門元春「この場にいない人間。しかも、一般人“以外”の人間。ってことになるな」
新たに浮上した第三者だが、意外な方面から目星が付くことになる。
一方通行の携帯が着信音を響かせる。
しかし、開いてみると……。
一方通行「……あン?」
着信音は鳴り続くが、何の表示も出ていない。
登録者の名前も、未登録の番号も、非通知とも表示されていない。
この何もない表示の正体を、一方通行は知っている。
土御門元春「一方通行……、これは……」
一方通行「……あァ」
かつて、上条の携帯にもかかってきた“AIM拡散力場からの一方的連絡”だった。
浜面仕上『よぅ、この間ぶりだな。一方通行』
一方通行「ハッ、死人のくせに元気だけは一人前みてェだな。浜面」
電話の相手に、一同は皆が驚いていた。
浜面仕上『こっち側で原子崩しと顔を合わせてさ。一方的だけど、そっち側の携帯に連絡が出来るって教えてもらった』
一方通行「そォかよ。で? わざわざ俺に連絡寄こすくれェなら、それなりに旨いモン食わせてくれンだろ?」
浜面仕上『………ハハ、気分は悪くなるかもしんねぇけど、アイテム風スパイスの効いた上等品を召し上がってもらうぜ』
しばらくして、路地裏から全員が顔を出してきた。
白井たちが迎えた時、別方向から上条も駆け付ける。
これで、この場に八人が集結した。
上条当麻「ハァ……ハァ……。み、皆…聞いてくれ。インデックスから、連絡があって……」
一方通行「犯人の目星か?」
その言葉に、上条は口を閉じた。
よく見れば、路地裏から出てきた面子の顔色は、あまりいいものだとは言えなかった。