とある学園の死闘遊戯 罪

□第06話 場所
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 一方通行はコンビニにいた。

 上条がセリーアの犯行手口を聞いてる間に、缶コーヒーを買いに来たのである。

 もちろん、犯行手口の内容は既に垣根から聞いてた。

花一籠目「……一方通行さん」

一方通行「あァ?」

 気が付けば、花一の姿が横にあった。

 ついてきていたらしい。

一方通行「何の用だ」

花一籠目「私もコンビニです。喉が渇いちゃいまして」

 棚に並ぶ飲料水の中から、お気に入りの炭酸ジュースを取り出す。

一方通行「“エクレアココナッツ”だ? そンなモン旨ェのかよ?」

花一籠目「甘くてシュワシュワなんですよ。飲んでみますか?」

一方通行「いらねェっつーの」

 缶コーヒーを一本だけ手に取り、レジへと向かう。

一方通行「貸せ」

花一籠目「…え?」

一方通行「いちいち二手に並ぶこともねェだろォが。一緒に支払っちまうから、そいつを貸せ」

花一籠目「うぇえ!? そ、そんな悪いですよ! あぁ!」

 花一の答えも待たずに、一方通行はエクレアココナッツを掠め取る。

 一方通行に気付いた店員が、レジを挟んで駆け付ける。

浅月悠馬「いらっしゃいませ、ありがとうござい……あれ? 籠目ちゃん?」

花一籠目「ふぇ? あ、浅月さんだ。こんにちは」

 首くらいまで伸びた黒髪にアホ毛を伸ばした丸眼鏡の少年。

 浅月悠馬は花一と挨拶を交わした。

一方通行「知り合いか?」

花一籠目「おにくの知り合いです。同い年なので、ちょっとしたお友達なんですよ」

一方通行(“おにく”?)

 花一の発言も気になったが、もっと気になることもあった。

一方通行「同い年だァ?」

 浅月は花一と同じ中学一年生だったが、その身長は161p。

 約130pほどの花一と比べると、上級生か兄妹にしか見えない。

一方通行「つゥか、テメェ中学生なンだろ? 何でバイトなンかしてやがンだ」

浅月悠馬「ヒィッ、すいませんごめんなさい。実はバイトではなくて、ただのお手伝いなんです」

一方通行「手伝いだと?」

 このコンビニは浅月が通っている中学の先輩が下宿しているらしい。

 たまたまコンビニ前を通りかかった際に、人手不足という理由で捕まったんだとか。

浅月悠馬「どうせ僕なんて、学校の先輩に扱き使われるだけの存在なんです……。当の先輩は遊びに出かけちゃうし、あぁ……帰りたい……」

一方通行(不憫にも程があるだろ……。上条じゃあるめェし)







 一方通行たちが帰った後、浅月はドッと肩の力を抜いた。

浅月悠馬「き、緊張した〜……」

 一方通行は彼を知らないだろうが、浅月は一方通行を見たことがあった。

 擦れ違う程度だったが、今の浅月を形作っているのは一方通行だと言っても過言ではない。

浅月悠馬「一度亡くなったのに生き返って。今は二代目の統括理事長……。この都市って、やっぱり普通じゃないですね……」

 浅月は学園都市の闇や歴史を知ることを目標にしていた。

 暗部が完全に解散した今、彼の目標は学園都市そのものに向いている。

浅月悠馬「見届けさせていただきます。この都市の未来、どのように傾くか楽しみですよ。統括理事長」







 第一七七支部に帰る前に、一方通行は路上のベンチに腰掛けた。

 何の連絡もない以上、帰ったところで退屈だろう。

一方通行(ただ待ってるだけってのも、案外困っちまうモンなンだなァ……)

 ふと視線を移せば、花一が傍で立ち尽くしていた。

一方通行「なに突っ立ってンだ。座らねェのか?」

花一籠目「…………」

 実はこのベンチ、三人で座われないほど短いため、二人で使う場合はかなり身を近付けることになる。

花一籠目「………し、失礼、します…」

一方通行「おォ」

 ちょこんと隣に腰掛けた花一。

 その座高もとても低く、まるでお人形さんの様だった。

一方通行(成長止まってンじゃねェのか……。いや、中学一年ならこンなモンなのか?)

花一籠目(………か、会話が…)
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