とある学園の死闘遊戯 罪

□第07話 用途
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 上条たちが行方不明の女性たちを保護していく。

 牢屋の前に着いたところで、事前に渡されていた電動ノコギリで檻を壊しているのだ。

 次々と捕まっていた女性が自由の身になっていく様子を、セリーアは顔を歪めて見ているしかなかった。

セリーア「くっそぉぉ……! くそッくそッくそッくそッ!!」

 そんな彼へと、ゆっくり近付いていく者が一人。

海原光貴「おやおや、そこまで顔を歪めるほど悔しいのですか?」

セリーア「ーーーッ」

 乱れた髪から汗を飛ばし、セリーアは海原の姿を確認する。

海原光貴「質問しましょう。御坂美琴さんを失踪させたのは、貴方ですか?」

セリーア「……ハッ、な…何のことだ…?」

 バァンッと、拳銃の発砲音が響き渡り、セリーアの左腕を撃ち抜いた。

セリーア「ーーーッ!!? ぐ、ああああああぁぁぁぁッ!!!!」

海原光貴「質問しましょう。御坂美琴さんを失踪させたのは、貴方ですか?」

 海原は、まったく同じ質問を繰り返した。

 違う点と上げるならば、その顔には笑みがなく無表情であり、その手の銃はセリーアを捉えて離さない。

セリーア「あ、あぐぅ……ッ。き、君たちは……何をしているのか、分かっt」

 バァンッと、同じ発砲音が再び。

 今度は左手を撃ち抜き、中指と人差し指が飛んだ。

セリーア「ーーーッ!!? う、うああ!! あ、あ……ぁぁ…ぁ…」

海原光貴「質問しましょう。御坂美琴さんを失踪させたのは、貴方ですか?」

 同じ質問、同じ表情。

 違う点は構えていた銃を下ろしたことと、黒光りする石のナイフを取り出したこと。

 セリーアは悟った。



 本当に殺される、と……。



セリーア「う、うわああああああぁぁぁぁぁああああああッ!!!!」

 無我夢中で足場から飛び降りたセリーアを、海原は何もせずに見送った。

 目の前から誰もいなくなったところで、海原はいつも通りの笑みを取り戻す。

海原光貴「一方通行さんから、殺すなと言われていますからね。あのような脅しだけで錯乱していただけて、本当に良かったです」

 あれで“脅し”だという。

 非情で残忍な手段であり、発砲し傷を負わせていようとも、海原にとっては脅しに過ぎない。

海原光貴「それにしても、あの場でまだセリーアが踏み止まっていたら……。自分はどのように行動していたのでしょうかね……。ふふふ」

 ゾッとする雰囲気を残して、海原は静かに立ち退いていった。







 海原から逃げ延びたセリーアは、真下の足場に背中を打ち付けていた。

 だが、左手と腕に走る激痛と熱に比べたらデコピン程度の刺激である。

セリーア「あぐッ! くぅぅ……ッ」

 血を滴らせつつ立ち上がろうとしたセリーアの視界に、足が入ってきた。

 顔を上げてみれば、ホストのような学園都市の第一位が笑いながら見下している。

垣根帝督「よう、女を好き勝手に連れ去ってハーレムな気分を味わった感想。聞かせてくれねえか?」

セリーア「あ……、貴方たちは……ッ」

垣根帝督「まあ、尤も……」

 ゴスッと、垣根がセリーアの顎を蹴り上げた。

 大きく仰け反ったセリーアは、顎と首を一度に痛めた上に頭から足場へと落ちていった。

 軽く脳震盪でも起こしたのか、横倒しのまま上手く立てずにいる。

垣根帝督「その顎を潰される前に頼むぜ」

 再び口元を狙って蹴りつける。

 綺麗に整っていた美形な顔付きは、今では顎や口元が血に塗れていた。

セリーア(くぅッ!! ちっくしょォッ!!)

 ゴロゴロと転がる形で、再び真下の足場へと逃げ延びた。

 垣根が追ってくる様子はない。

セリーア「ごほっごほっ! かっはァ!! ハァ……ハァ……」

 口に溜まった血を吐き出して、フラフラとセリーアは立ち上がった。

 そして気付いた。



 前方に、こちらへと銃を向けた金髪の男がいることに。



セリーア「ヒィッ!!」

土御門元春「はぁ〜い、いらっしゃいませ〜。本日のメニューは、激痛を存分に味わえる拳銃の鉛玉でございま〜す♪」

 バァンッと発砲音が響き、セリーアの右腕を掠めた。

 わざと外したのではなく、セリーアが必死に避けたのだ。

 それ故に、バランスが取れずに尻餅をついて倒れるセリーア。

セリーア「ちょ、ちょっと待ってください!! 監禁していた女性は全員お返しします!! もうこれ以上抵抗しません!! だから助けt」

 バァンッ!! バァンッ!!

 銃声が、二回聞こえた。
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