とある学園の死闘遊戯 罪

□第07話 用途
3ページ/4ページ


 セリーアの両膝を、土御門が一瞬で撃ち砕いた。

セリーア「あぁッ!! ぐ、がぁぁぁああああああああああッ!!」

土御門元春「悪いな。抵抗するとかしないとかは関係ないんだぜい。殺さないことが条件だが、それ以外は何でも有りってな」

 両膝を潰され、もはや歩くことも立つことも出来なくなったセリーアは、力なく俯くしかなかった。



 はずだった……。



セリーア「………ふふ…」

土御門元春「ん? 何を笑っt」

 土御門が尋ね終える前に、それは始まった。

 セリーアが倒れていた足場がバラバラと形を変えていく。

土御門元春「ーーーなッ!?」

セリーア「そうですか……。殺すつもりはないんですね……。ならば、まだ僕は逃げられますッ!!」

 もともと脱出用に細工していたのだろう。

 形を細かく変えていった足場は、斜めに傾くとセリーアの体を滑り下ろしていく。

 まるで、巨大な滑り台だった。

土御門元春「ま、待てッ!!」

 すぐさま狙いを定めようとするが、どんどん加速して滑り降りていくセリーアを追うことが出来ない。

 下手に撃って足場に当たれば、跳ね返った流れ弾が誰かに当たる可能性もある。

土御門元春「……くそッ!!」

 ここまで来て、セリーアを完全に見失ってしまった。







 どんどん加速して滑り降りていくセリーアは、一時的な脱走に満足していた。

 この滑り台は、あらかじめ用意していた壁の脱出口に続いており、入り込めば自動的に別の学区まで運送されるようになっている。

セリーア(何とか、この場からは逃げられそうですね……。痛ッ!!)

 セリーアの体はボロボロだ。

 顎や口は裂けて血塗れ、左手と左腕も撃ち抜かれ、両膝は完全に砕かれている。

セリーア(ですが、この場を離れられれば問題はない。また体勢を立て直して、僕は再び……ッ!!)

 脱出口が見えてきた。

 しかし、何故か外から漏れる光が弱い。

セリーア(……?)



 まるで、脱出口の前を“何か”が塞いでいるようだった。



セリーア(ーーーッ!!?)

 脱出口を塞いでいたものは、白く白く白かった。

 電極のスイッチを入れ、能力をフルに発動している学園都市統括理事長が、脱出口の前で両腕を広げていた。

セリーア「ぁ……あぁ……ッ!!」

一方通行「ラジオ体操、第一ィ♪ 両腕を大きく広げてェ♪」

 爪が剥がれるのも構わずに、セリーアは残された右手でブレーキを掛けようと足場に爪を立てる。

 しかし、ここまで加速したスピードの中、自分の体を腕一本で止めることは出来なかった。

 自分の行き先は、脱出口という名の光ではなく、一方通行の能力という名の闇でしかなかた。



セリーア「うわああああああああああッ!!」

一方通行「クソッタレで哀れな害虫をォ!! その両腕で打ち払ってあげましょォォおおッ!!」



 一方通行の胸に全力で飛び込んでしまったセリーアは、両脚の骨をグシャグシャに骨折して跳ね返された。

 反射の餌食になったセリーアの体は、貸倉庫の地面へと落ちていった。







 とある牢屋の檻を開けた上条は、中にいた被害者に声を掛ける。

上条当麻「聞こえたか? 今の悲鳴」

 車椅子を動かして、被害者へと近付く。

上条当麻「一方通行の声も聞こえた。多分、アイツがトドメを刺したんだろうな」

 ぐったりとした被害者の手錠と足枷を外す。

上条当麻「多分、これでこの事件は解決だぜ。だから……」

 首輪はノコギリでは危険なため、鎖だけを切断する。



上条当麻「だから、一緒に帰ろうぜ。御坂」

御坂美琴「『…………ぅん……』」



 全身がボロボロになって発見された美琴は、か細かったものの確かにそう返答した。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ