とある学園の死闘遊戯 罪
□第08話 色欲
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事件解決から三日後。
上条は車椅子を卒業し、二本足で歩いていた。
上条当麻「やっと完全な上条さんが戻りましたよぉ! 見てくれ、もう全然脚が痛まねぇんだ」
土御門元春「リハビリご苦労さん。だけど眼帯忘れてるぜい? 眼球がなくてグロいんだから、それだけは忘れないでほしいにゃー」
上条当麻「おおっと、いけねぇ……」
左目に黒い眼帯を着けて、上条はようやく退院した。
上条当麻「つーか、グロいって失礼だぞ! 上条さんだって傷付きますことよ!?」
土御門元春「事実だにゃー」
とある病室。
薬物成分を完全に中和するため、美琴の退院は少し延びてしまった。
白井黒子「お姉様、何かありましたら遠慮なさらずに申してくださいませ」
御坂美琴「『……うん。ありがとう、黒子』」
病室の外から様子を窺っていた海原は、ホッと溜息を吐いた。
海原光貴「やれやれ、これで自分も落ち着きました……」
一方通行「つゥかよォ、超電磁砲の声がおかしくねェか? マスクもねェのにくぐもって聞こえるぞ」
海原光貴「あぁ、それは人工舌の影響です。発音の仕組みに干渉しているので、少々機械的な喋り方に聞こえるだけですよ」
声を取り戻した美琴だったが、現状ではこれが最良の状態らしい。
聞いた話では、本人も不満は持っていないという。
一方通行「ま、以前みてェに喋れねェよりはマシってわけか……」
病院の待合室。
初春が垣根と現場での出来事を話している最中。
佐天は離れた場所で通話をしていた。
佐天涙子「ナノカプセルが盗まれた件、役に立ったんでしょうか……」
青髪ピアス『大丈夫やって。カミやんたちに掛かれば、どんな情報もありがたいんよ』
佐天涙子「……なら良かったです。初春や白井さんの力になりたかったですし、私も御坂さんを助けたかったので」
青髪ピアス『結果として、全員無事に帰還やもんなぁ。いやー、良かった良かった』
非公認組織バブルに所属する佐天は、その事実を初春たちには隠している。
表に立つ者を支援する身であるため、時には危ない橋を渡ることもある。
そのことを心配してくれるであろう初春たちには、絶対に知られたくない秘密だ。
青髪ピアス『ところで、木山先生が脱退して新しく補充した子なんやけど、ぶっちゃけどう?』
佐天涙子「いや〜……、まさか相園さんが抜擢されてるとは予想外で……。かつて対峙した関係ですので、ちょっと気まずいかなぁと……」
貸倉庫内で上条たちの行き先を遮る形で支援していたのは、非公認組織バブルの新構成員“相園美央”だった。
かつて美琴と交じり合ったほどの実力を持つ大能力者(レベル4)で、白井や初春、佐天とも対峙した経緯を持つ長点上機学園の生徒だ。
油性オイルの分解と再構築を自在に行う“油性兵装(ミリタリーオイル)”という能力を所持しており、味方にしては十分すぎる戦力になる。
佐天涙子(……ただの無能力者(レベル0)で、情報収集と提供しか出来ない、こんな私の存在って……)
青髪ピアス『……今、レベルのこと考えてた?』
佐天涙子「…………」
青髪ピアス『当たりやね?』
佐天は何も言えなくなる。
秘密や不思議の多い青髪ピアスには、何をしても勝てる気がしない。
青髪ピアス『ボクらが余計なこと考える必要あらへん。あくまで手助けやからな』
佐天涙子「…………」
青髪ピアス『ボクはカミやんや土御門くんを守りたい。佐天さんにも守りたい人がおるやろ? だったら守ろ。ボクらの力で』
佐天涙子「……はい」
通話を切ると、初春が呼びかけてくる。
この後は美琴の病室にお見舞いに行くのだ。
佐天涙子(そうだよね……。私は私の力で、守りたい人たちを守らなきゃ)
初春たちに手を振って、佐天は日常に溶け込んでいく。
汚れを洗い流していく泡(バブル)とは、もともとそういう存在なのだから。