とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 過去
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 【約半年前】

 垣根と初春が初めて出会ったのは、何処にでもある普通のファミレス。

 しかし、その立ち位置は敵同士だった。

初春飾利「風紀委員です!」

垣根帝督「………あん?」

 ファミレス内の客は全員が騒いでおり、我先にと逃げ出す者で溢れていた。

 というのも、垣根は男性客の胸倉を掴み上げて半殺しにしていたのだ。

 男性客は顔中を己の血で赤く染め、鼻を削がれていた。

 もはや文字通りの瀕死状態である。

初春飾利「何てことをッ!? は、早く救急車をッ」

垣根帝督「うるっせえガキだ。コイツは裏の人間だぜ? 表の連中の世話になんざならねえんだよ」

 そう言った垣根は、手加減もせずに男性の頭を蹴り飛ばした。

 頭蓋骨にヒビが入ったのではないかと思うほど、嫌な音が響いた。

初春飾利「きゃーッ!!」

垣根帝督「暗部の人間のくせして、こんな場所で飯食ってるからだ」

 その男は、暗部組織で機密情報の売買を行っていた。

 とある情報をスクールに売った際に、偽の情報だと知っていて売り渡した上、スクールの下部組織に甚大な被害を与えたのだ。

 男にとって、情報は使い方次第で応用できるもの、という方針で商売しているため、スクールの被害はスクール自身にあって自分にはないと主張し逃亡していた。

 もちろん、垣根の怒りを買ったことにも気付いていなかった。

垣根帝督「この俺をムカつかせるクソ野郎は、誰だろうと容赦しねえ。てめえも死ぬか? 風紀委員」

初春飾利「ーーーッ」

 垣根は、まだ生きている男にトドメを刺そうと手を伸ばした。

 しかし、その間に初春が割り込む。

初春飾利「ま、待ってくださいッ!」

垣根帝督「…………」

初春飾利「も、もう止めてください! この人、本当に死んじゃいます! ここまでやったんですから、もう大人しk」

 ぐしゃっ、っと軽くも鈍い音が響いた。

 垣根の裏拳が、初春の顔を殴り飛ばしたのだ。

初春飾利「あ……、あが……ッ」

垣根帝督「加減してやった。女だろうがガキだろうが、次は容赦しないねえ。それに、コイツは“死んじゃう”んじゃねえよ」

 右手で男の頭を掴み上げると、左手の拳で狙いを定める。

垣根帝督「コイツは“殺される”んだよ! てめえがナメ腐りやがった暗部組織スクール、垣根帝督の手によってなあ!!」

 しかし、垣根が拳を放つことはなかった。

 殴られた頬を腫らした初春が、垣根の左拳を掴んでいたからだ。

初春飾利「フー……フー……。ダ、ダメ……です……」

垣根帝督「…………」

初春飾利「ひ、人殺…し……なん、て……絶対…に……」

 垣根は右手から男性を解放する。

 その右手を初春の右肩へと優しく添えた。





 そして、能力を行使して初春の肩を容赦なく外した。





 初春の肩が、グシャリと悲鳴を上げた。

初春飾利「ひぎッ!! あ、あああああああああああああッ!!!!」

垣根帝督「暗部の人間に“人殺しはダメ”だ? ふざけてんじゃねえぞコラ」

 パァンッと初春の頬を叩き飛ばし、一瞬で意識を飛ばさせる。

 初春が目覚めた時、駆けつけた救急隊員に運ばれていく様子を感じながら、荒らされた店内へと目を向ける。

 顔をグシャグシャに潰され、殺されてしまった男性の遺体にシートを被せている瞬間だった。

初春飾利(……暗部、組織……。スクール……)

 薄れゆく意識の中で、初春は忘れないためにも記憶を逆上る。

 あの少年の、名前と表情を。

初春飾利(垣根……、帝督……)

 寂しさと戸惑いが入り混じったような表情を、初春飾利は忘れない。







 それから数日後。

 暗部組織の間で抗争が始まった。

 グループとスクールが激突し、学園都市の第一位と第二位が戦闘を始める。

 結果として、垣根帝督は敗北し、その身は学園都市の闇に回収されることになる。





 ……はずだった。
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