とある学園の死闘遊戯 罪
□第04話 人選
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この食事処=新入生=でも、スヴィルはトリックスターの六人を“選んできた”とは言っていなかったような気がする。
上条当麻「決まってたって言うのか……。スヴィルに従う魔学サイドのトリックスターは、アイツが選んだわけじゃなくて……!?」
一方通行「……魔学サイドに加わり、トリックスターになることが決められていた、選ばれし不名誉で哀れな連中……ってか。だが、スヴィルが選ンだわけじゃねェなら、どォやってその六人を的確に集めたってンだ?」
トリックスターの六人は、スヴィルが世界中を渡り歩いて選び抜いたわけではない。
捜し出した、という言葉を使う以上。
トリックスターとなった六人は、トリックスターになることが決められていたということなのだろうか。
そして、スヴィルはその六人を捜し出した。
捜し出してトリックスターと名付けた。
魔学サイドの住人として、学園都市を潰すスヴィルの駒として……。
上条当麻「スヴィルには、トリックスターになる運命だった六人を見分ける能力でもあったのか……?」
一方通行「…………見分ける……?」
その言葉を繰り返した一方通行は、目の前に浮かぶ文字とメモ紙の文字を眺める。
不自然にも英語ではなく、ラテン語で書かれた氏名。
ポルトガル語ではなくラテン語で手配されているセリーア。
指名手配犯ではないスヴィルの名がラテン語で書かれたこと。
一方通行「………オイ」
ソンシャン「はい?」
一方通行「この名前にヒントが隠れてる、とでも言いてェのか」
ソンシャン「……正解です」
セリーアの文字が歪み始め、配列が並べ代わっていく。
中には、余分な文字や新たに加わった文字もあったようだが、組み上がった文字の大半は“セリーア=シルッキー”のものだ。
上条当麻「別の名前になったのか?」
一方通行「いや、名前じゃねェ。“ルクセリア”ってのは“色欲”を表す言葉だ」
上条当麻「“色欲”かぁ……。そりゃ何ともセリーアらしい言葉だな」
ソンシャンが、スヴィルの名を描いたメモ紙に、新たな文字を書き加える。
再び差し出したメモ紙には、セリーアのものと同じように“スヴィル=ペァゴーマ”の文字を組み替えた文字が書かれていた。
もちろん、余分な文字や新たに加わった文字もあったが、ほとんどがスヴィルのものだ。
一方通行「………“スペルヴィア”…。ラテン語で“傲慢”……」
上条当麻「あぁ…、確かにスヴィルっぽいな」
一人で結論付けて頷く上条だが、一方通行は押し黙っていた。
“色欲”と“傲慢”。
この二つの言葉が意味することを。
一方通行「“七つの大罪”ってヤツか」
ソンシャン「仰る通りです」
上条当麻「……七つの、大罪……?」
ソンシャンは、数枚のタロットカードを取り出した。
しかし、それは市販の物とは思えない粗い作りだったため、おそらくは魔術材料に過ぎないものだろう。
ソンシャン「動物や惑星、天使に魔王と、司るものは多くありますが、最終的にはキリストの教えに行き当たります」
七枚のカードを並べた後、その中から二枚を選んで一方通行たちに差し出した。
カードには、孔雀と山羊の動物が描かれており、背景には恐ろしい形相の悪魔の顔があった。
ソンシャン「“七つの大罪”とは、人間を罪に導くとされる七つの欲望や感情。かつては“八つの枢要罪”と呼ばれていましたが、第六十四代ローマ教皇によって今の形となりました」
一方通行「雑学なンざ聞く耳持たねェよ。俺が聞きてェのは、ただ一つだ」
一方通行「残る五人のトリックスターってのも、七つの大罪から調べ上げられンのか、って話だ」
スヴィルとセリーアの名から、七つの大罪の“傲慢”と“色欲”が浮き上がった。
逆に言えば、残る五つの大罪を組み替えて、トリックスターを追跡することが出来るのではないか。
一方通行「ここ最近、この学園都市に近付いた外部の人間。世界中の人間に比べりゃ少な過ぎる数だ。そいつらの名を組み替えて大罪と一致すりゃ、そいつがトリックスターの可能性が高い」
上条当麻「名前なんて、偽名でもなけりゃここまで都合のいいものは持てないはずだ。偶然だとしても、神様に選ばれたって思って仕方がねぇからな」
ソンシャン「…………」
偶然、七つの大罪を意味する言葉を本名として生まれ持った者たち。
それが、スヴィルがトリックスターを捜す手掛かりとしたものだった。
ならば、七つの大罪から残る五人を捜すことも不可能ではないかもしれない。
しかし……。
ソンシャン「もう一つ、無視できない仮説があるのです……」
ソンシャンの発言に、二人は顔を見合わせた。