とある学園の死闘遊戯 罪
□第05話 食堂
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一方通行は、迷わずグゥラーの腹を殴りつけた。
グゥラー「ぐぇあぁ!!!!」
上条の右手を始めとして、ドロドロになった肉塊が一気に溢れ出した。
嘔吐物の噴水を反射し、上条の右手を拾い上げた一方通行は急いで後退する。
一方通行「あの医者に頼めば縫合できンだろ! 傷口押さえて下がってろ!」
上条当麻「わ、悪いな……。サ、サンキュー……一方通行……」
一方通行「垣根ェ! こっち来て手伝え! 垣根ェ!!」
呼んだが返事はなかった。
代わりに、白井が空間移動で駆け付ける。
白井黒子「申し訳ありませんの。事情がありまして、更に班を分けざるを……って、その傷は!!」
一方通行「話は後回しだ。とにかくメルヘン野郎がいねェのも理解した。さっさと上条を病院に連れてけ!」
話も手短に、上条を地下室から脱出させる。
再びグゥラーへと振り向いた一方通行は、吐き出された肉塊へと目を向ける。
かつて、風紀委員か警備員だったものを見つめ、救えなかった者の存在を思って胸を痛める。
一方通行(黄泉川……。テメェは無事なンだろォな……。もしも簡単に食われてたら、死ンでも許さねェぞ…………あァ?)
そこで、一方通行は肉塊に何かが付着していることに気付いた。
ウヨウヨと虫のようなものが動いていたが、原形が分からない。
一方通行「……これは」
グゥラー「…………無鉤、条虫……」
腹を押さえながら、グゥラーがフラフラと立ち上がった。
一方通行「胃袋ォ潰す威力で殴ったつもりなンだがなァ……」
グゥラー「生まれつき、胃や腸が……異常なほど、丈夫でしてね……。そこの“彼ら”にとっても、良い住処と……なっているようです……」
グゥラーは、肉塊に蠢く虫のようなものを“彼ら”と呼んだ。
“無鉤条虫”という言葉にも引っ掛かりを覚える。
一方通行「イイ住処がテメェの胃袋、ってか。見る目のねェセンスだなァ、オイ。ようするに寄生虫だろォが」
グゥラー「無鉤条虫や、広節裂頭条虫など……呼び方は様々、です……。ここは、“サナダムシ”とでも……言っておきましょうか……」
しかし、人の臓器に寄生するサナダムシが目に見えるはずがない。
ならば、肉塊で蠢いているものは何なのだろうか。
一方通行「………テメェ、まさか」
グゥラー「……ふ、まぁ…隠すことでも、ありません……」
押さえていた手を退けると、グゥラーは腹を示して解説した。
グゥラー「専門家の話では、私の消化器官には通常の約6300倍の寄生虫が存在するそうです。分かり易く言えば、胃や腸の表面が寄生虫に埋め尽くされている感じでしょうか……」
一方通行「気色の悪りィ野郎だ」
これが人間を食べ続けた理由に繋がるわけではない。
もちろん、胃が丈夫だというのも寄生されていることには繋がらないかもしれない。
一方通行「だが、テメェの食事は今日で終いだ。精々これからは囚人飯で我慢するンだなァ」
グゥラー「ご安心を。私、牢屋も手錠も、食物以外のものも食べれますので」
一方通行「なら意地でも絶食させるわ、バァカ」
そんな会話が、途中で止まる。
一方通行の背後から、花一が顔を出したからだ。
一方通行「チビガキッ!?」
グゥラー「おや?」
意外な加入者に目を丸くするグゥラー。
一方通行は思いっきり焦っていた。
一方通行「馬鹿かテメェ! 何やってやがる!!」
一方通行の怒鳴りが聞こえているのか、花一は進む足を止めた。