とある学園の死闘遊戯 罪
□第01話 出座
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垣根が目を覚ましたのは、あれから数十分後だった。
垣根帝督「……外傷は、特にねえな…」
白井黒子「ホントに眠らされていただけでしたのですね……」
垣根帝督「ムカつくことに変わりねえけどな」
上条が携帯を使い、ソンシャンとの通話をスピーカーに切り替える。
皆が集まって、話の内容に耳を傾ける。
ソンシャン『全国指名手配犯の中から、魔術師に限定……。容姿を検索して、更に絞っていきます……』
上条当麻「……どうだ?」
ソンシャン『………はい、ヒットしました!』
その返答に、皆の表情にも真剣さが増す。
一方通行「そいつの名も、大罪を捻ってンのか?」
ソンシャン『そのようです。名は“アヴァリ=ゴーショォク”。既に名前だけでネタバレしてますね』
一方通行「……今度の敵は“強欲”ってか」
“強欲”はラテン語で“アヴァリシア”。
“アヴァリ”という名前ならば、まず間違いはないだろう。
上条当麻「それで、そのアヴァリはどんな魔術が得意なんだ?」
ソンシャン『そうですね……。物質と物質の合成や、物質そのものの変換魔術。簡単に言ってしまえば、アヴァリは“錬金術師”ですね』
錬金術師。
その名に、上条は覚えがあった。
と言うのも、かつて上条は錬金術師と戦った経験まで持っていたのだ。
上条当麻(……あれ? そう言えばアイツの攻撃方法って……)
上条がちょっとしたことに頭を悩ませている最中、一方通行は話を進めた。
一方通行「指名手配の罪状は何だ? 強欲ってことは窃盗か何かか?」
ソンシャン『………いえ、アヴァリには殺人罪が科せられてます。グゥラーほどではありませんが、猟奇殺人のようです』
グゥラーは史上最悪の猟奇殺人犯と呼ばれていた。
同じように猟奇殺人犯と呼ばれているアヴァリは、どのような殺人を行ったのだろうか。
ソンシャン『“合成獣(キメラ)”という生き物をご存知ですか? アヴァリは、その材料に“生きた人間”を大量に使用した記録が残っています』
合成獣とは、一つの体に異なる遺伝子を加えて形作られた生物を意味する。
幻獣“キマイラ”に由来し、基本として獅子や山羊などが使用されるらしい。
アヴァリは、その組み合わせに“人間”を使ったのだ。
“何人”も“生きたまま”の状態で。
海原光貴「自分も、他人の皮膚を借りている身ですが……。さすがに恐ろしく思ってしまいます」
土御門元春「まぁ、アヴァリに比べれば海原のは可愛い方だぜよ」
一方通行は、アヴァリの言っていたことを思い返す。
彼女は、一方通行たちを“遊び尽くす玩具”だと言っていた。
ここに来たのも挨拶に過ぎないと。
一方通行(玩具……。どォしても理解できねェな……。あの女は一体何を企ンでやがる……)
また何か分かったら連絡し合うということで、ソンシャンとの通話は切られた。
とにかく、次に対峙しなければならない敵だけは判明した。
上条当麻「これだけでも、今までよりはマシだよな?」
白井黒子「今までは敵の居場所や正体まで調べなければなりませんでしたので、そういう意味ではマシですわね」
花一籠目「…………」
俯いたままの花一に、一方通行が気付いた。
一方通行「……不安か?」
花一籠目「………イヤな、予感がするんです…」
一方通行「“イヤな予感”だァ?」
花一は小さく頷いた。
花一籠目「……何だか、足がフラフラします…。イヤな予感、緊張、してるのか…も……」
ボソボソと呟き続ける花一の頭に、一方通行がチョップを落とした。
ビシッ
花一籠目「ーーーぴゃッ」
一方通行「バァカ。ただ疲れてるだけだ」