とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 混乱
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 と、思っていた矢先に頭を叩かれる。

 パァンッと、頭に小さな衝撃が襲う。

一方通行「………痛ッゥ…」

垣根帝督「人様の後ろで、何グースカ眠ってやがんだコラ」

 頭を上げて確認するまでもない。

 一方通行の席は、教室の一番後ろ。

 一つ前の席に座っている垣根の背に隠れて、居眠りするのは日常茶飯事だ。

一方通行「………今、何の授業だ…?」

垣根帝督「数学だ。つーか、教科書すら出してねえのかよ……」

 退屈な授業はサボるに限る。

 一方通行に注意している垣根も、嫌いな授業があるときは中等部の校舎に遊びに行ってるのだ。

一方通行「そンなに彼女と一緒にいてェなら留年しろ、クソメルヘン」

垣根帝督「そのケンカ買った。授業終わり次第、迅速に面貸せ」

 垣根の背中をボーっと眺めていると、また睡魔に襲われそうだった。

 中等部は体育の授業なのか、グラウンドの方から声が聞こえた。

一方通行「………このクソ寒みィ中、花一も大変だなァ…。入院中だったテメェの彼女は復帰したのか?」

垣根帝督「…………は?」

 一方通行の問いに、垣根は首を傾げて振り向いた。

垣根帝督「初春は入院なんざしてねえぞ。つーか、“はないち”って誰のことだ? 初春の友達か?」

一方通行「………あン…?」

 でも聞き覚えねえな、と呟いている垣根を無視して、一方通行は違和感を覚える。

 確かに初春は入院していない。

 今なら、それははっきりと認識できる。

一方通行(………“花一”…。それは………誰のことだ…?)

 覚えのない名前。

 しかし、一方通行が口にした名前。

 何か、大事なことを忘れているような気がした。

一方通行(………なンだァ…? この状況下で、俺は一体なにを忘れてるってンだ……)

 考えようとするが、答えが出ない。

 思い出そうとするが、思い出せない。

一方通行(………あァ、ダメだ…)

 分からないことは考えても分からない。

 それよりも、今は眠かった。

一方通行(……その内、思い出すだろ……)

 授業中の教室。

 一方通行は机に伏せって眠り始めた。

垣根帝督「あ、また眠りやがった。マジでムカつく……」







 鼓膜を刺激する機械音。

 質の悪い目覚まし時計のような騒音に、一方通行は飛び起きた。

一方通行「ーーーゥるっせェンだよッ!!」

 思いっきり腕を振り回し、騒音の主を捕えた。

 大学の研究機材が、一瞬にしてガラクタと化す。

一方通行「…………やっちまった……?」

白井黒子「そのようですわね」

 気が付けば、すぐ近くに白井の姿があった。

 見事に吹き飛んだ研究機材(の成れ果て)を見据えて、白井は溜息混じりにレポートを差し出す。

一方通行「……土御門からの研究レポート?」

白井黒子「一応、目を通してくださいまし。何でも、今後の大学授業に取り入れたい自由課題だそうですの」

一方通行(そう上手く公開出来りゃ苦労しねェンだよ……)

 レポートの内容を流し読みにしていく一方通行。

 だが、その中で彼の目の動きがピタリと止まる。



一方通行「……七つの、大罪……?」



白井黒子「……はい?」

 一方通行が、それを読み上げた瞬間。



 周りの世界が、一瞬にして砕け散る。

 一方通行の体が足場を失い、浮遊感を与えつつ下へ下へと落ちていく。

一方通行「ーーーッ!!?」



 全ての感覚が治まった時。

 一方通行は、再び目を覚ました。
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