とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 混乱
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 目を覚ませば、挨拶をしてくる男が一人。

花一匁目「よぅ、おはようさん」

一方通行「…………」

 一方通行は、学園都市のベンチに座って眠っていた。

 その隣では、花一がスヤスヤと眠っている。

花一匁目「三分間か……。だいぶ疲れてたんだな、やっぱり」

一方通行「…………どォいう意味だ……」

 一方通行は、先ほどの経験や情景を覚えている。

 海賊だったり、普通の高校生や大学生だったり。

 あれは、夢だったのだろう。

花一匁目「カゴメが疲れてるのは分かったが、アクセラレータだって疲れてたんだろ? 雰囲気で何となく分かったぜ」

一方通行「だから強制的に眠らせましたってか? それがテメェの能力か」

花一匁目「いい顔をしてる。どうやら、疲労も完全に回復したみたいだな」

 言われてみれば、確かに体が軽かった。

 疲れがスゥッと抜けたようで、力がグッと湧いてくる。

一方通行「………これは…」

花一匁目「…………」

 買ってきておいた缶コーヒーを差し出し、匁目は話し始めた。

花一匁目「まだ混乱してるか? だが、これはオレの能力じゃない」

一方通行「……あァ?」

花一匁目「アクセラレータは、意識がなくなる前に何を聴いてた?」

 一方通行の意識がなくなる前、彼が聴いていたもの。

 かごめかごめの唄。

一方通行「……まさか」

 チラリ、と隣りで眠る花一に目を向ける。



一方通行「……コイツか」

花一匁目「そう。アンタを眠らせたのは、カゴメの能力なんだよ」



 そう言えば、一方通行は花一の能力を知らなかった。

 常盤台中学に通っているからには、強能力(レベル3)以上なのは確かだろう。

一方通行「眠らせる力、か……。入眠能力ってヤツか」

花一匁目「う〜ん……。正式には間違っちゃいないんだが、オレはちょっと違うと思ってる」

一方通行「……なら、オマエは何だと思ってンだ?」

 匁目は、可愛い寝顔の妹に視線を移して優しく微笑む。

花一匁目「カゴメの能力は、強能力(レベル3)の“入眠音波(オルゴール)”。童謡“かごめかごめ”を唄って、それを聴いた人をレム睡眠に落とし入れる能力なんだ」

一方通行「レム睡眠だと?」

 人の睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠が存在する。

 レム睡眠とは、身体は眠っていても脳は活動している状態。

 ノンレム睡眠は、身体も脳も眠っている状態。

 そして、人はレム睡眠とノンレム睡眠の状態を一定時間ごとに繰り返して眠りについているのだ。

 ちなみに、人はレム睡眠時に夢を見る確率が高いという。

花一匁目「カゴメの唄を最後まで聴いた瞬間、その人は強制的にレム睡眠状態に落ちる。そして、日頃から蓄積されている疲労を完全に癒してくれるんだ」

一方通行「……ノンレム睡眠に移行することは?」

花一匁目「ない。カゴメの能力で眠った場合、寝てから起きるまでレム睡眠が続く」

一方通行(なるほど……。夢の内容を覚えてられンのも、それが原因か……)

 人は目覚めると、見ていた夢の内容を忘れていることがあるが、実はそれにも理由がある。

 レム睡眠の状態で目覚めると、その時に見ていた夢を記憶したまま起床できる。

 しかし、ノンレム睡眠時に目覚めてしまうと、見ていたはずの夢は脳に記憶されていないのだ。

 レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返している人間の脳は、目覚めた時の状態によって夢を記憶できるか否かが変わってくるのだ。

一方通行(レム睡眠しか引き起こさねェなら、見た夢は全部覚えて目覚める、ってわけだな……)
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