とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 混乱
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一方通行「ところで、さっき言ってやがった“三分間”てのは何なンだ」

花一匁目「ん? あぁ、その人の疲労度ってところだな」

 一方通行が眠っていたのは、どうやら三分ほどの短い間らしい。

 それは長い方なのだろうか。

花一匁目「長いな。普通なら一分程度だ」

一方通行「夢の内容とは誤差があるンだな。三分なンざ、夢ン中ならあっという間に過ぎてたぞ」

花一匁目「一種類の夢を見るのに、カゴメの力は一分を費やす。三分てことは、三種類くらいの夢を見れたんじゃないか?」

一方通行「…………」

花一匁目「そして、普通の疲労なら一分間の夢で回復させられる。それが、アンタは三分も眠ってた。かなり疲れてた証拠だよ」

 そこで気付いた。

 一方通行の隣りの花一は、まだ眠っている。

 一方通行が起きてから三分は経過したため、六分以上眠ってることになる。

花一匁目「あぁ、カゴメも相当疲れてたんだな。でも、カゴメにとっては三分が一回分の回復時間だ」

一方通行「……唄を聴いたヤツは一分で回復できるが、自分自身は三分も掛かっちまうのか?」

花一匁目「その通り。だから、唄を聴いたお客さんが、カゴメが起きるまで付き添わなきゃな」

 不意に匁目が立ち上がる。

 どうやら、そろそろ帰るつもりらしい。

花一匁目「明日は学校なんだ。カゴメにも言っといてくれよ」

一方通行「………ちょっと待て」

 帰ろうとする匁目を、一方通行が引き止めた。

一方通行「さっきテメェは、コイツの力は“眠らせる力”じゃねェって言ったよな。その理由を聞いちゃいねェぞ」

花一匁目「…………」

 その問いに、匁目は笑顔で答えてみせた。

花一匁目「強制的に眠らせといて言える立場じゃねぇが、何でわざわざアンタにも聴かせたと思う?」

一方通行「あン?」

花一匁目「オレはアンタが疲れてると思った。だから聴かせた。でもそれは“ついで”だ」

 なら、本命は誰なのだろう。

 そして、それは一方通行の隣に答えがある。



花一匁目「それが、強能力(レベル3)止まりの理由だ。カゴメは、唄を聴いた人を眠らせるだけじゃなく“唄った本人まで有無を言わずに眠っちまう力”なんだ」



花一匁目「だからオレは、カゴメの能力をこんな風に解釈する」

 歩き去りつつ、匁目はしっかりと答えていった。

花一匁目「“添い寝しつつ添い寝させる能力”ってな。また会おうぜ、アクセラレータ統括理事長」







 匁目が去ってから、すぐに花一は目を覚ました。

花一籠目「………おはようございます…」

一方通行「……おォ」

 大きく伸びをする花一は、匁目がいなくなってることを確認し、問いかける。

花一籠目「聞きました? 私の能力」

一方通行「……あァ」

 ベンチから立ち上がった一方通行は、花一の頭を撫でて歩き出す。

一方通行「極上の子守唄だったぜ」

 さっさと歩き出す一方通行は、ベンチに座ったままの花一には目もくれない。

 頭を撫でられて顔を赤く染める花一は、急いで一方通行の背中を追った。

 二人の表情に、もはや疲労の色は見られない。







 そして、再び事件の中に飛び込む。

 この時は、最悪の結末が待っていることを。

 二人は、まだ知らない。

 このヒトトキが、もしかしたら一番幸せだったかもしれないことを……。



  【第03話につづく……】
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