とある学園の死闘遊戯 罪
□第01話 ……
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海原、もといエツァリは第177支部にいた。
最低限の医療品を揃えてもらい、今は仕切りの向こうで手当てをしている。
自分の手で、自分の腹を縫合しているのだ。
土御門元春「ご苦労なことだな。学園都市のIDを持ってるヤツにでも成り済ませばいいものを。俺になってくれたも構わないぜ?」
エツァリ「………いえ、この程度で、入院するわけにも、いきませんので………」
この程度、という部分が引っかかる。
臓物がこぼれ、真っ黒な血が大量に流れて“この程度”という。
幸い輸血を手に入れてもらえたからいいものの、今頃死んでいてもおかしくないほど重傷なのだ。
土御門元春「それにしても、良かったのか? 超電磁砲のこと」
エツァリ「……はい。わざわざ、悲痛な思いを味合わせることも、ないですしね……」
土御門元春「死ぬ思いで頑張ったのになぁ。文字通り」
エツァリ「自分が未熟だっただけです。次は、こうはいきません……」
一通りの縫合を終えたエツァリは、傷口を消毒して包帯を巻いていく。
その上からギブスも巻き付け、絶対安静を強いられる体を動けるようにしていく。
土御門元春「休んでおけ。今度こそ死ぬぞ」
エツァリ「それはもちろんです。しかし、いつでも動けるように、準備だけは整えます」
エツァリ自身も気が立っているのだろう。
想いを抱く相手を操り人形にされ、例え救ったとしても黙っていないのがエツァリなのだ。
土御門元春「まったく……。漢の鑑だよ、お前は……」
土御門とエツァリが仕切りの向こうで治療をしている間。
表では白井がトリックスターの情報を整理していた。
セリーア、グゥラー、アヴァリ。
色欲、暴食、強欲。
今まで戦ってきたトリックスターと、象徴する大罪。
そして、傲慢のスヴィル。
偶然並べてみただけだったが、ソンシャンから渡されていた少ない資料から“ある法則”が見えてきた。
白井黒子「……これは」
その時、第177支部の扉が開いた。
そして、一度に四人が入室してきた。
上条当麻「何か、すみません。溜まり場じゃないのに入り浸っちゃって」
固法美偉「いいのよ。トリックスター、だっけ? そいつらから学園都市を守ってくれてるみたいだし、白井さんも初春さんの分まで風紀委員の活動を怠けてはいないわ。何より……」
固法は、チラリと一方通行を盗み見た。
固法美偉「統括理事長様が動いてるんだもの。追い出す方が失礼ってものよ」
一方通行に続いて、初春の見舞いに行っていた垣根が顔を出した。
仕切りの向こうに声を掛ける。
垣根帝督「おーい。そっちは大丈夫か? お迎え来ちゃった?」
エツァリ「勝手に殺さないでいただけますか」
垣根帝督「おお、死に損ねたか」
一方通行は、とりあえず垣根を殴ってから白井へと歩み寄る。
一方通行「何か分かったか」
白井黒子「………ただの偶然かもしれませんが、少々気になることが…」
その発言に、皆が無言で白井へと集まってくる。
エツァリも、極力動かないようにしているため耳だけは鋭く澄ませている。
その様子を見ながら、固法は微笑んで立ち去った。
腕章を持っていった以上、定期的なパトロールだろう。
もしくは、空気を読んで席を外したのかもしれない。
白井黒子「今まで戦ってきたトリックスターの三人。その大罪を並べてみましたの」
上条当麻「セリーアが色欲。グゥラーが暴食。アヴァリが強欲。だったよな?」
白井黒子「はい。続いて、こちらが七つの大罪に関する資料ですわ」
パソコンを操作して、七つの大罪の解説文を開く。
そこには、残りの四つを含めた大罪の名が並んでいる。
白井黒子「大罪が紹介されている順番。何か思うところがありません?」
七つの大罪の解説文には、次のような順番で紹介されていた。
傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。
土御門元春「俺たちが倒してきたのは、最後の三つだな」
一方通行「ご丁寧に最後尾から数える順番だな」
確かに、倒してきた順番は色欲、暴食、強欲だ。
後ろから順番に現れているのは偶然なのだろうか。