とある狭間の平行世界
□第01話 第二学区A
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方位的な知識は一般常識程度の上条だが、それでも何とか移動することは出来た。
白井と別れた後、別方向へと移動した上条は、少々開けた場所に出ていた。
見たところ、どうやら町らしい。
上条当麻「………知り合いはいないけど、何気に見た覚えの顔触れもあるな…」
おそらく、全員が学園都市の住人だ。
街中で見かけた程度だが、数人ほど覚えがある者がいた。
今のところ、出会った知り合いは白井だけだが。
上条当麻「……いや。出会っちゃいないが、こいつの顔も知ってるな」
町にある情報掲示板らしき看板の中に、見慣れた人物が掲載されたアイドルポスターが貼ってあった。
名前は“食蜂操祈”。
上条当麻(間違いない……。常盤台の女王と知れる、第五位の超能力者だ)
彼女がこんなところにアイドルとして貼り出されている理由は分からないが、もしかしたら彼女もいるかもしれない。
常盤台のエースにして、第三位の超能力者。
上条当麻「…御坂、美琴………」
連絡を取ってみようかと携帯を出すが、電波が悪いのか圏外だった。
上条当麻「っておかしいだろ!? ここ町中だぞ、おい!!」
咄嗟のツッコミに、周りが上条を見てざわつき始める。
上条当麻(うっ……、何か恥ずかしいな………ん…?)
だが上条は気付いた。
周りの者たちは、上条が突然叫んだことに不審に思っているわけではないらしい。
耳を澄ませれば、大体の言葉は拾える。
上条当麻(……………)
何で第三学区の奴が、堂々と町中を歩いてんだ。
さっさと出て行け。
死ね。
見てるだけで虫唾が走るんだよ。
テメェの国(学区)に帰りやがれ。
目障りだ。
上条当麻(……おいおい、さっきと言い、今と言い。俺はここまで嫌われ者だったか?)
気になるのは、第三学区、という言葉。
周りの反応を見ると、やはり上条は第三学区の人間と言うことで通っているらしい。
そしてもう一つ、上条には首を傾げてしまう事柄があった。
掲示板に貼られた、案内図の全体地図。
上条当麻(この町は学園都市の第二学区で、間違いないらしい……。でも学園都市の全体図、これはどういうことだ…?)
この第二学区を南下した場所が第一学区。
そこを更に南下した最南端の学区が第三学区。
また、第一学区を西方面に進むと第四学区があると記載されているが、この地図ではそれ以外に何も書かれていない。
つまり、この学園都市には“第一学区から第四学区まで”しか存在していないというのだ。
上条当麻(第七学区がないのか……。いやその前に、この学園都市は一体何なんだ? まずはそこから調べなくちゃ……)
地図を見る限りでは、第一学区が学園都市の中心であり、最も広い面積のようだ。
まずはここに向かっていった。
第一学区。
見覚えのある“窓のないビル”が第一学区の中央に建っていた。
この学区には、第二学区の町中にはなかった巨大なショッピングモールや、遊園地のようなレジャー施設など、自然が溢れていた第二学区とは違って都会な雰囲気が漂っていた。
上条の知る学園都市とは違うが、まだ第一学区の方が近いものがある。
上条当麻「あくまで“中心街”って意味合いがあんのか……」
何処をどのように行けば何処に出るのか分からないのは第一学区も第二学区も変わらない。
フラフラと次の目的地を探すべきかと考えながら歩いていた上条は、真横から走ってきた人物と衝突してしまう。
上条当麻「ーーー痛ッ」
????「ーーーうわわッ!!」
双方とも倒れ、上条は思いっきり尻餅を突いた。
上条当麻「あ痛たたた……ッ。あ〜、ふk」
????「不幸だーッ!!」
恐ろしく聞き覚えのある台詞。
ぶつかった人物は、買ったばかりの卵を全部割ったことに項垂れていた。
上条当麻「………あれ…?」
その後ろ姿とツンツン頭に、上条当麻は開いた口が塞がらなかった。
【第04話につづく……】