とある狭間の平行世界
□第04話 第一学区A
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“窓のないビル”から流れている放送を聞き、麦野が歩み出す。
麦野沈利「……行ってくるわ」
絹旗最愛「超お気をつけて」
滝壺理后「行ってらっしゃい、むぎの」
浜面仕上B「頑張ってこいよ。でも無理はするな」
まるで戦いに行く戦友を見送るような面々に、上条Aたちは完全に蚊帳の外である。
上条Bを除いては。
上条当麻B「やれやれ、学区長ってのも大変だなぁ」
上条当麻A「なぁ、あれって何しに行くんだ?」
上条Aの質問に、上条Bは真面目な顔で返答した。
上条当麻B「………来たる戦争の作戦会議、かな…」
上条当麻A「はぁ?」
一方通行「…………」
一方通行は“窓のないビル”に向かっていく面々の中に、先ほどまで共に行動していた垣根の姿があることに気付いた。
一方通行「………確か、垣根は第三学区の副学区長で、俺が学区長だって言ってやがったな…」
浜面仕上A「え? じゃあ、こっちの世界の一方通行も“窓のないビル”に現れるってことか?」
上条当麻B「いや、残念ながらそれはない。だからこそ、代理で垣根さんが“窓のないビル”に出向くんだよ」
確か上条Bと浜面Bは、一方通行の顔を見た際に驚いていたのを思い出す。
それは垣根も同じだった。
一方通行「こっちの俺は、どうやら引きこもりみてェだな」
上条当麻B「悪い言い方をすれば、な」
上条Bは麦野を見送っていた浜面Bに近付き、何かを話しに行った。
その間、上条Aと浜面Aに耳打ちする一方通行。
一方通行「いまいち状況が掴めねェが、俺たちは何が何でも元の世界に戻るぞ。もう意味の分からねェ異世界探検なンざ御免だ」
上条当麻A「で、でも。こっちの世界の事情も気にならねぇか? 俺たちが意味もなく別世界に迷い込んだことにも意味があるかもしれないし」
浜面仕上A「………俺は複雑だなぁ…。俺に優しくて夢中になってるアイテムなんて、現実じゃあ有り得ないからなぁ……。でもなぁ……」
一方通行「何を一人でブツブツ言ってやがンだ、気色悪りィ」
浜面仕上「ひでぇッ!!」
すると、浜面Bと何か話していた上条Bが三人の元へ戻ってきた。
上条当麻B「三人共、もし良かったら第三学区に行かないか? 浜面は二人とも、ちょっと痛い目を向けられるかもしれないけど」
痛い目を向けられるというのは、おそらく上条Aが第二学区で浴びた視線のことだろう。
一方通行「俺たちが第三学区に行って、何かメリットでもあるってのか?」
上条当麻B「あくまで可能性だけど、三人がこの世界に迷い込んだ理由が分かった気がするんだ。その鍵が第三学区にある」
浜面仕上A「俺たちが、この世界に来た理由?」
上条当麻A「それって……」
上条Aが問おうとしたものの答えを、浜面Bが引き継いだ。
浜面仕上B「おそらくだが、これからこの世界で起こるかもしれない戦争に関係するんだ。お前たちは第三学区の“とある男”に呼ばれて、ここに来た可能性が一番高い」
一方通行「“とある男”だと? 一体、何処のどいつだ?」
一方通行から問われたことに、上条Bと浜面Bは少しだけ微笑んだ。
上条当麻B「……一方通行さ」
一方通行「…あァ?」
浜面仕上B「そっちの一方通行の言葉を借りるなら、お前たちをこの世界に呼び出したのは“一方通行B”である可能性がある。そう言ってんだよ」
この世界の学園都市にて、第三学区の学区長を務めている引きこもり。
一方通行Bが、上条Aたち三人を呼び寄せた?
上条当麻A「だから俺たちに、第三学区へ向かうべきだと?」
上条当麻B「もちろん俺たちも同行する。この件、俺たちも気になるからな」
浜面仕上B「もちろん、ただの可能性でしかない。第三学区へ向かうかどうかは、お前たちが決めてくれ」
しかし、その質問は必要なかった。
この現状でどう動くべきかも分かっていないなら、可能性のあるものに向かって進むしかない。
一方通行「面白ェじゃねェか。こっちの俺に会って、引きこもり生活をメチャクチャにしてやるよ」
上条当麻B「じゃあ、決まりだな」
上条Aと上条B、浜面Aと浜面B、そして一方通行の計五人は第三学区へ向かう。
第三学区の学区長、一方通行Bに会うために。
浜面仕上B「そういうわけだから、悪いな。デートの続きは、また今度ってことで」
絹旗最愛「絶対ですよ! 超絶対ですよ!! 次は私と映画ですからね!!」
滝壺理后「待って浜面! 私は満足してないよ! この次も私と」
浜面仕上B「分かった分かった。麦野の件もあるし、また皆で出掛けような?」
一方通行「………オマエ、あれ見て羨ましいとか思ってンだろ?…」
浜面仕上A「…………」
上条当麻A「……せめて何か言い返せよ。無言が一番虚しいぜ?」
【第05話につづく……】