とある狭間の平行世界

□第05話 第三学区B
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 高級高層マンションは内部まで水で彩られていた。

 壁、天井、床、更には置かれている家具までが水を模した物が多く、まるで巨大な水槽の中にいる気分になる。

浜面仕上A「スッゲェ〜……、水族館みてぇだ……」

上条当麻A「魚は一匹もいねぇけど、確かにこりゃ水族館だな……」

上条当麻B「はは、何言ってんだ。この場合はむしろ、俺らが魚側だろうがよ」

 上条Bは、自分たちが水槽の中にいる魚のようだ、と言っているように聞こえる。

 確かに周りに魚のいない水槽など、傍から見れば自分たちが魚だという捉え方も間違いではないように思えた。

 しかし……。



浜面仕上B「何言ってんだよ。じゃあ、まるで俺はエサじゃねぇか。お前らは絹旗にでも食われちまえ」

上条当麻B「場合に寄っちゃ俺もお前も食われる側だろ? それに、俺はそこらの魚類とは違うんだぜ?」

浜面仕上B「あぁ、そう言えばそうだったな」



 この会話の意味は、理解できなかった。

 上条Bと浜面Bの会話は、自分を人間であることを前提とした会話に聞こえなかった。

 まるで、自分たちは魚類などの“別の種族”であるような話し方だったのだ。

一方通行「…………テメェら、一体何の話をしてやがンだ……?」

上条当麻B「え? いや、何って言われてm」



????「そりゃ俺のセリフでもあるよなァ? テメェら、ここで一体何してやがンだ? あァ?」



 突如、廊下の向こう側から“聞き覚えの有り過ぎる声”が響く。

 五人が目を向けた瞬間、声の主と一方通行の視線が交わる。

一方通行A「……お、俺…だと…!?」

一方通行B「あン……? おォ、テメェら“やっと来やがった”のか」

 顔を確認して開口一番、こちらの世界に住まう一方通行Bは確かにそう言った。

一方通行A「“やっと来やがった”だと……」

一方通行B「あァ、テメェらが別世界の学園都市に住ンでやがる三英雄なンだろ? 俺が呼び出したンだ」

上条当麻A「こ、こっちの一方通行が俺たちを!?」

浜面仕上A「な、何の理由があって、そんな…ッ」

 驚愕の表情を浮かべる上条Aたちだったが、上条Bと浜面Bもまた、違う意味で驚愕の表情を浮かべていた。

上条当麻B「“呼び出した”ってことは……ッ」

浜面仕上B「一方通行……ッ。まさか、この三人を…!?」

 一体何の話をしているのか、まったく追いつけない上条Aたち。

 しかし、上条Bたちには意図することが一致してる様子。

一方通行B「来たる戦争の日。そこに投下して、くだらねェ戦いを最小限に抑えンだよ」

上条当麻B「で、でも! 別世界の俺たちを利用するなんて……ッ」

一方通行B「利用じゃねェよ、共闘だ! 俺ァ元々、始まりかけてる戦争自体に反対だってンだ、くだらねェ」

一方通行A「……オイ」

 痺れを切らした一方通行Aが会話に割り込む。

一方通行A「さっきから俺らを切り捨てて、勝手に話を進めてンじゃねェよ! 簡潔に答えやがれ。テメェらは俺らをどォするつもりだ!」

 上条Aも浜面Aも固唾を呑んで黙る。

 その様子に、一方通行Bが答えてみせた。

一方通行B「今この学園都市は、くだらねェ戦争を起こそうとしてやがる。早ェ話が、俺はテメェらを計画の一部として必要としただけだ。強制はしねェが、協力を仰ぐぜ」

一方通行A「……戦争だの、協力だの。ンな細けェ話は後でゆっくり聞いてやる。だが一つだけ答えておけ。戦争に向けて企ててる計画ってのは、何なンだ?」

上条当麻A「場合によっては、俺らの協力ってのも関係してくるからな」

 それは、内容によっては協力しない、という表れだった。

 だが、一方通行Bは知っている。

 “上条当麻”という人間は、誰かを必要としている人間に手を振り解くような男ではない、と。

 こちらの世界にも、上条当麻はいるのだから。

一方通行B「……十中八九、もォ戦争が起きることは確定してる。俺の計画の目的はただ一つ」



一方通行B「始まっちまう戦争の被害を、最小限に食い止めて終わらせる。黙って着いてきな。詳しい話を聞かせてやるよ」



 【第06話につづく……】
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