とある狭間の平行世界
□第06話 第二学区B
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上条Bの説明を聞いた上条Aたちは、自分たちの学園都市では聞き慣れない単語に首を傾げる。
上条当麻A「“能分者(ハーフマン)”…? 俺たちで言うところの“能力者”ってヤツか……」
一方通行A「人間じゃねェって言ったが、具体的にはどォ違うってンだ?」
上条Bたちの見た目は、普通の人間と大差ない。
しかし、上条Bが右手を前に突きだし、浜面Bが口を開けてみせたことで、その違いが目に見えて分かった。
上条当麻A「ーーーえ?」
浜面仕上A「ーーーなッ!?」
上条Bの右手の五本指の先が、ラッパのように広がっており、手の平や甲にもラッパのような棘が何本も生えてきた。
浜面Bの口内に生える歯が、まるで牙のように伸び始め、上顎の犬歯は鎌のように曲線を描いて顎の下まで伸び出したのだ。
一方通行A「……なるほど。確かに人間じゃねェな」
上条Aと浜面Aは、もはや何も言えない。
一方通行B「“能分者(ハーフマン)”ってのは“別の生き物”と融合した人間を意味してる。まァ、人口230人全員が能分者なのは確かだが、こンな風に目に見えて生き物の特性を出せる奴は極少数だけどよ」
浜面仕上A「…え? ち、ちなみに何人くらいがこんな風に力を振るえるんだ…?」
浜面仕上B「えーっと……、確か総人口の約88%くらいだったような……」
上条Aと浜面Aが計算しようとする前に、一方通行Aが即答する。
一方通行A「俺たちの言葉に表すなら、何の役にも立たねェ無能力者が約200人。それ以外が、まともな能力者ってところか……」
早い話が、別の生き物と人間が融合した能分者として、目に見える変化を表せられる者は約30人ということだ。
一方通行A「たった30人なら、力の順位でも付いてンじゃねェのか?」
一方通行B「その言い草からして、そっちの学園都市にも順位ってのはあるみてェだな。確かに、俺らにも第一位から第三十位までランク付けされてるぜ」
一方通行A(俺らンとこは超能力者(上位七人)だけなンだが……、まァイイか。説明すンのもめンどくせェ……)
浜面Aが、おそるおそる手を上げて質問した。
浜面仕上A「ち、ちなみに……。こっちの俺と大将って、第何位なんですか……?」
その答えを聞いた後、浜面Aはガッツポーズを決め、上条Aはorzポーズに崩れた。
第二学区、御坂美琴の家。
第四学区の学区長・麦野沈利を招き入れて、御坂は“とある提案”を持ち掛けていた。
麦野沈利「来たる戦争で、手を組もう……ってこと?」
御坂美琴「そうよ。これ以上、会議で話し合いを続けてても終わらないし、この調子じゃ絶対に戦争は始まっちゃう。第二学区と第四学区が手を組んで、第三学区の連中に勝つ。これしかないと思うのよ」
麦野沈利「……悪くない話だとは思うわ。お互いにもメリットはあるし」
御坂美琴「でしょ? だったr」
麦野沈利「でも、まだ頷くことは出来ないわ」
御坂美琴「ど、どうしてよ!! 別にデメリットがあるってわけでもないのに……」
麦野沈利「こっちにもじっくり考えるだけの時間が欲しいのよ。ただそれだけ」
御坂美琴「じっくり考える時間て…、そんなこと言ってたら、すぐに戦争が始まっちy」
麦野沈利「…るっさいわね」
御坂美琴「ーーーッ!!」
突然、御坂の首を左手で掴み上げ、右手の人差し指を御坂の眉間に当てる麦野。
そして反射的に、首を掴まれながらも麦野の両脇腹を両手でグッと掴む御坂。
麦野の人差し指は鋭く尖っており、その先端からは何かの液体が滴っている。
御坂の両腕は鉄のように強固になり、簡単には振り解けないほどの力で脇腹を掴み込んでいる。
麦野沈利「私の毒針が眉間に刺さるのと、アンタの豪腕で腹を左右に引き裂かれるの。どっちが早いかしらね?」
御坂美琴「言っとくけど、後者を迎えさせる自信があるわよ? 第四位が第三位に勝てる気でいないことね」
しばらく静寂が続いた後、ゆっくりと麦野が御坂から左手を離し、右手の毒針も引っ込めた。
御坂の顔を、何かの液体がツーッと伝っていく。
麦野沈利「その毒液、しっかりと拭い落としておきなさい。死にたくなかったらね」
それだけ言い残して、麦野は御坂の家から出て行った。
残された御坂は洗顔して麦野の毒を洗い落とすと、手を結ぶ交渉に失敗した苛立ちから傍の机を蹴りつける。
蹴った威力は極小。
だが蹴られた机は、修復不可能なほどバラバラの木片へと変わり果てた。
【第07話につづく……】