とある狭間の平行世界

□第07話 第五学区A
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 一方通行Bが話を続けた。

一方通行B「第五学区が作られた最初の理由は、ただの領土拡大が目的だ。しかし、この学区をどの種族の能分者が取り締まるのか。その問題が解決せずに、今は学区同士で第五学区の支配を賭けた戦争が始まろォとしてやがンだ」

 その言葉に、上条Aは疑問を口にする。

上条当麻A「でも、第四学区の奴らは住処を欲してんだろ? じゃあ第五学区は、今の第四学区の連中のものってことでいいじゃねぇか。第四学区はこの際切り捨ててさ」

浜面仕上B「残念ながら、そう上手くはいかねぇんだよなぁ。他の学区にも、他の学区なりの問題ってヤツがあるんだよ」

浜面仕上A「他の学区なりの問題?」

 第五学区を誰の支配に置くか。

 その議題が上がった際に、第二学区、第三学区、第四学区、それぞれ三人の学区長(一方通行は欠席のため第三学区のみ副学区長)は各々の提案を口にしたのだ。

 第二学区、学区長・御坂美琴。

御坂美琴『今の学園都市は、それぞれの学区によって人口数が違いすぎる。パワーバランスが偏り過ぎてるのよ。第五学区を更に三つに分けて、皆で分けるべきだわ』

 第三学区、副学区長・垣根帝督。

垣根帝督『知っての通り、第三学区は全学区の中で最も人口数が多い。今も尚住人は増え続けており、これ以上の住人を迎えるためには第五学区を水中生物を主とした学区にするべきだ。第五学区は第三学区の支配下に置く』

 第四学区、学区長・麦野沈利。

麦野沈利『第四学区に住み続けていたいのに、環境が悪いせいで他の学区に引っ越すことになった住人が大勢いるの。今、第四学区にいる住人を全て第五学区に移住させて、今まで第四学区にいた住人も第五学区に迎えるべきだわ。もちろん、その子たちの意思を優先するけどね』

 以上が、学区長たちの言い分である。

 ちなみに、人口は第二学区が93人。

 第三学区が114人、第四学区が22人だ。

一方通行A「第二学区と第三学区の人口、対して変わンねェじゃねェか」

上条当麻B「いや、俺たちの学園都市ってお前らから見ても狭いだろ? 一つの学区に110人超えちまうと、結構キツいんだよ」

 そんな風には見えなかったが、こっち側にはこっち側の問題があるらしい。

一方通行B「この議題が解決しないせいで、もうすぐ戦争が始まることが決定してやがる。くっだらねェ争いだ」

一方通行A「第五学区の支配権は戦争の勝者に、ってわけか……。分かり易いが確かにくだらねェな」

 学園都市が抱えている問題も理解した。

 しかし、まだ残っている謎がある。

上条当麻A「でさ。結局、俺たちを呼んだ理由は何なんだ?」

浜面仕上A「だな。俺たちが首突っ込んでいい問題にも思えねぇし」

 二人の疑問に、一方通行Aが溜息を吐く。

一方通行A「安心しろ。シンプルで分かり易い答えだ」



一方通行A「俺らに戦争を勝ち取らせて、学園都市そのものを潰してほしいンだろ」

一方通行B「違うわボケ、死ね」



 一方通行Bが突っ込み、訂正する。

一方通行B「テメェらに、それぞれの学区に入り込ンで犠牲を最小限に抑えてほしいンだよ。戦争が始まることはほぼ確定してるから、被害だけは抑えるだけ抑えンだ」

上条当麻A「はぁ!? ちょっと待て! じゃあ俺って第二学区に忍び込むのか!? 唯でさえこっちの俺は第三学区出身なのに!? 俺、第二学区でスッゲェ睨みつけられたし、白井にだって目ぇ付けられたんだぞ!」

一方通行A「テメェの不幸体質は今に始まったことじゃねェだろォが。何を今更喚いてやがンだ」

上条当麻B「や、やっぱり…そっちの俺も不幸体質なんだ……。別の世界でも、俺って不幸なんだな………」

浜面仕上A「幻想殺しがないのに不幸なのかよ…。もはや同情する必要があるのかも疑問に思えてくるな…」

浜面仕上B「白井って、確か第二学区の学区長を慕ってるツインテールだろ? 確か“ヤマカガシの能分者”だって聞くし、気をつけろよ」

上条当麻A「不幸だーーッ!!!!」

 白井に睨まれた時の人間とは思えない目。

 今思えば、あれは確かに蛇の眼だった。



  【第08話につづく……】
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