とある狭間の平行世界

□第08話 第四学区B
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 浜面に与えられた寝室に入った浜面は、寝台を見下ろして立ち止まる。

 掛布団の中、明らかに人間一人分の膨らみがあった。

浜面仕上A「…………」

 バッと捲ってみれば、予想していた少女が予想していた通りに忍び込んでいた。

浜面仕上A「……何やってんだ、絹旗」

絹旗最愛「…イエスorノー?」

浜面仕上A「チェンジで」

絹旗最愛「うなああああああッ!!」

 ブァンッと掛布団を浜面に投げつけ、バフンバフンと寝台の上で地団太を踏む。

絹旗最愛「こっちの浜面ならイエスとも言わず超ベッドインして超抱きしめてくれるのにぃ!!」

浜面仕上A「もういい。もうこっちの俺に対しては突っ込まねぇよ」

 色々と疲れてしまった浜面は絹旗を寝台から下ろして横になる。

 掛布団を掛け直し、灯りを消してから間もなくだった。

 モゾモゾと足元の方から誰かが浜面の身体を這う形で侵入してくる。

 ピョコッと浜面の隣に顔を出した。

浜面仕上A「何してんだ?」

絹旗最愛「超添い寝」

浜面仕上A「自分の部屋に戻れっつーの……」

 そのまま追い出そうとしたが、絹旗は抱き枕のように浜面に抱きついて離れない。

 その腕の力は、窒素装甲を持たない普通の少女であるはずの絹旗からは、考えられないほど強力だった。

浜面仕上A「……ヒグマの力、ってやつか」

絹旗最愛「おぉ、超よく知ってますね」

 昼間、こっちの絹旗がヒグマの能分者であることを聞いていた。

 確か、麦野がスズメバチであるとも聞いているが、滝壺のものは聞いていなかった気がする。

浜面仕上A「……滝壺は、何の動物の力を持ってんだ?」

絹旗最愛「むぅ、超この状況で別の女の子の話を持ち出すなんt」

浜面仕上A「いいから答えてくれよ」

 何か言いた気な絹旗だったが、浜面の質問にも答えてくれた。

 滝壺理后は、ハブの能分者らしい。

浜面仕上A(スズメバチにヒグマにハブ、そしてグンタイアリか…。危険生物のオンパレードじゃねぇか…)

絹旗最愛「スゥー……スゥー……」

浜面仕上A「もう寝てんのかよ」

 浜面は何気なく絹旗の寝顔に目を向ける。

 美少女と言っても過言ではない絹旗の寝顔には、一切の警戒がない。

 自分の強さに自信があるのか、浜面を信頼しているからか、その両方か。

浜面仕上A(………俺が、ここに連れてこられた、理由…)

 戦争が始まるのは三日後。

 このままでは何人の犠牲者が出るのか分からない。

 戦争を止められないのならば、上条Aと一方通行Aと共に被害を最小限に抑えてほしい。

 それが浜面Aたちを呼んだ一方通行Bの目的だった。

浜面仕上A(……チッ、上等じゃねぇか)

 麦野の仲間想いな一面を知った。

 滝壺と絹旗の純粋な想いを知った。

 浜面仕上が動き出す理由に、もう他には何もいらない。

浜面仕上A(何の力もない無能力者な俺でも、こいつらが傷付く要素を最小限に抑えられんなら、いくらでも手を貸してやるさ……)

 明日と明後日で戦争に関する情報を集めよう。

 また、第四学区のためになることも考えてみよう。

 浜面にもやれることはたくさんある。

 三日後の戦争開始までに整えなければならない準備がある。

浜面仕上A「……ったく、忙しいのはどの世界でも同じか」

 そう呟いた浜面だが、別段悪い気はしていない。

 そうさ、これが浜面仕上なのだから。



  【第12話につづく……】
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