とある短編の創作小説

□夏は嫌いだ
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 この状況を周りが見たら、どう思うのだろう。

 四人の女性(その内、二人は超似合ってる浴衣姿)に囲まれて、たった一人の男性が加わっている。

不良A「おい、何だアイツ」

不良B「ケッ、見せつけやがって……」

不良C「どうせならよぉ、ちっとばかし俺らにも分けてもらおうか…」

不良D「ゲッヘヘ…そりゃ良いな♪」

 下衆な四人組の声が浜面の耳に入る。

 背後から近付いてくる足音も、明確に聞き取ることが出来た。

浜面仕上「おいおい、マジかよ……。ったく、仕方ねぇな」

 浜面は首を振って背後を確認する。

 背中は向けたままだが、顔だけ見せつければ十分だ。

不良A「あぁ? なに眼飛ばしてんだ兄ちゃん」

不良B「俺らの会話聞いちゃった系? てか、文句でもあんのか?」

浜面仕上(……やっぱ、こいつらか)

 声に聞き覚えがあった。

 というのも、スキルアウト時代に喧嘩していた連中っていうだけで、名前など知らない赤の他人だが。

不良C「……って、おい…。こいつ、まさかスキルアウトの…」

不良D「…あぁ! そうだ…、こいつ…浜面仕上だぜ…ッ」

浜面仕上(あ、俺のことは知ってたのか……)

 ほんの一時だけだったとは言え、浜面はスキルアウトのリーダーだった男だ。

 知名度は低くても顔は広く、それなりの人望もあったことが救いだった。

不良A「…チッ、行くぞ…」

不良C「邪魔して悪かったな……」

 アイテムへの接触を諦めた四人は、舌打ちして立ち去っていく。

 ある意味、アイテムと関わらなかったのは正解かもしれないが。

麦野沈利「ふ〜ん…、浜面でもその程度は出来るのね」

絹旗最愛「超意外です」

浜面仕上「…あ?」

フレンダ「不良連中を四人も相手に、手も出さずに追い払っちゃうなんて」

滝壺理后「はまづら、実はすごい人?」

浜面仕上「……そんなんじゃねぇよ。お前らの夏祭りを楽しもうって雰囲気を、ぶち壊しにさせたくなかっただけだ…」

 ちょっと見直されたかも、と思ったが、図に乗ると後々が面倒だ。

 だが、この答えも間違いだったかもしれない。

フレンダ「結局、そういう格好つけなところがキモいんだって訳よ」

絹旗最愛「やっぱり浜面は超浜面だったってことですか」

浜面仕上「…はいはい、もう何とでも言えっつーの」

 夏は嫌いだ。

 無駄に騒ぐ馬鹿どもに絡まれそうになるし。

 回避したとしても、また別の災厄が待つ。







 スッ、と麦野が浜面の右手を取った。

浜面仕上「…え?」

麦野沈利「ほら、早く来なさい。まずは射的でも行こうかしら。私の満喫っぷりをその目でしっかり焼き付けてもらうからね♪」

 ギュッ、と滝壺が浜面の左腕に飛び付く。

滝壺理后「待って、はまづら。リンゴあめ見つけた! まずはあれが欲しいッ」

浜面仕上「へ? あ、あぁ、リンゴ飴な? ちょっと待ってろ」

 そう遠くないリンゴ飴の屋台を見つけ、浜面も動こうとした時、クイクイッ、っと絹旗が浜面のシャツを引っ張る。

絹旗最愛「浜面浜面! 綿菓子も超あります! 私が超見つけました! あれが欲しいので、超さっさと買ってきてください!」

浜面仕上「お前らは俺が分身術でも使える能力者だとでも思ってんのか? 生憎の無能力野郎なんだぜ? ちょっと待ってろって!」

 あっちこっちから引っ張り回された浜面だが、これで終わるはずがない。

 最後の一撃は、背中に突っ込む勢いでフレンダが飛び付いてきた。

フレンダ「浜面浜面!! フレメアがいました! 私の妹! ちょっと合流しようよ、今すぐ連れてくるから!」

浜面仕上「勝手に行って来いよ、んなもん! つーか、妹だぁ!? 俺の疲労感が増していく未来予想図しか浮かばねぇんですけどぉ!!」

 夏は嫌いだ。

 自由を奪われ、クソ暑い中でも遊び回る連中に囲まれて。

 きっと俺自身は、ほとんど楽しむことなど叶わない。



 それでも……。



浜面仕上「ったく、お前ら…いい感じに夏祭りを満喫してんじゃねぇか…」

絹旗最愛「マジですか? なら、約束の金一封は超全員にですか? 浜面ってば超太っ腹ですね」

浜面仕上「優勝者への金一封って、俺のポケットマネーかよ!!」

フレンダ「結局、今頃気付いたのかって訳よ♪」

滝壺理后「大丈夫だよ、はまづら。私はそんな扱いしか受けないはまづらを応援してる」

浜面仕上「マジで今月は金欠なんだってばッ。お前らに賞金出しちまったら、俺の生活費がッ」

麦野沈利「大丈夫よ。一ヶ月くらいなら死にはしないわ」

浜面仕上「何を根拠に言ってんだ! 柄じゃねぇけど、ここは叫ばせてもらうぜッ」



 夏は嫌いだ。

 でも今年のような、こんな夏なら、悪くない。

 そう思うことはおかしいか?





浜面仕上「不幸だぁーーーッ!!!!」





 いいや、きっとおかしくない。

 何しろ、浜面自身がそう感じているのだから……。
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