とある禁書の二次創作
□とある囚人の更生記録【読切版】
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木原が再び目を覚ますと、そこは質素な寝台の上だった。
手錠も足枷も椅子もない。
ただ、腰に付けられた札だけが残っていた。
????「おぉ、気が付いたか」
木原数多「……あぁ?」
木原が首を横へと向ける。
そこには、同じような寝台に腰掛ける、中年の男性がこちらを見ていた。
木原数多「誰だテメェは……。ここは何処だ……。何がどぉなってやがる……」
????「そんなに一度に尋ねないでくれよ。まずは名乗ろうかな。俺は島田、島田楠男」
木原数多「……クズ男?」
島田楠男「く・す・お。酷い間違え方だな……」
とりあえず起き上がった木原は部屋を見渡した。
真四角の部屋には寝台が壁側に一つずつ。
窓は一つだけあるが、外側に鉄格子が付けられている。
他にも、便所と風呂場が一つずつあるらしく、部屋の出入口も鉄格子の作りだった。
木原数多「チッ。まるで刑務所じゃねぇか……」
島田楠男「あながち、間違っちゃいないさ。ここは、死後の処理がきっちりと行われなかった者が逝きつく世界だ」
木原数多「“死後の処理”だ?」
島田楠男「葬式やって、墓に入れてもらう。そんな簡単なこともやってもらえなかった人間のことだよ。俺も、アンタも……」
木原数多「…………」
木原数多は、自分の葬式を思い浮かべる。
参列者がいるとは思えなかった。
そもそも、壁の染みへと変えられた自分の遺体があるとは思えず、葬式をやる必要も考えられなかった。
木原数多「…………ハッ」
島田楠男「鼻で笑える人生だったみたいだな。来いよ。この世界を案内してやる」
木原数多「案内だ?」
島田は出入口の鉄格子を押して外へ出る。
木原数多「おいおいおいおい、鉄格子なのは見せ掛けかよ。何人脱獄者が出るか分かったもんじゃねぇな」
島田楠男「脱獄者は0人だ。この世界に、逃げれる場所なんてなければ、逃げる必要もないからな」