とある禁書の二次創作
□Ib 〜Halloween nightU〜
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“ミルククラウン・ドレス”。
ゲルテナの残した芸術作品の中でも、最古と言われる歴史ある作品。
しかし、近年で開かれているゲルテナ展では展示されることがないため、その作品を見たことのある者は少ない。
と言うのも、作品自体に老朽化が進み、元々の素材の問題もあって保管に呈することで精一杯になっているのだとか。
メアリー「そんな作品が、何でここに……ッ!?」
ギャリー「多分、保管庫から持ち出したのよ……。今はハロウィンの真っ只中。言い方は悪いけど、作品の警備だって完全じゃないわけだし……」
イヴ「どうしよう……。早く戻した方が……」
ウォルター「……いや、そういう流れにはいかねぇみたいだぜ?」
ウォルターは周りの招待客の反応に意識を向ける。
その中には、既にゲルテナの作品だということに気づいている者がいるようだ。
それも、何十人も。
ウォルター「何事もなく治まったら、それこそ称賛に値するな」
ギャリー「馬鹿言ってないで、早く作品を下げさせないt……」
ギャリーの言葉を遮るように、パーティー会場が動きを見せる。
バブンッ!!!! とくぐもった破裂音が響き、会場の中心から濃い煙幕がモクモクと立ち昇る。
イヴ「ーーーわッ!? 何…ッ!?」
ギャリー「まさか……ッ!?」
数十秒後、煙幕が消えて再び見渡せるようになった会場の風景。
見世物を設置するために設けられた舞台の中心には、先程まであったはずの“ミルククラウン・ドレス”は影も形もなくなっていた。
メアリー「う…そ……」
ギャリー「…やられたわね」
たちまち騒い出す会場。
その中でも、不意に浮いて聞こえる騒音をイヴは聞き逃さなかった。
イヴ(……? 何、この音…?)
キョロキョロと辺りを見渡してみると、会場の影から一台の大型トラックが発車した。
別段、そのこと自体には問題はない。
夜中だろうと昼間だろうと、トラックの一台や二台は普通に走行している。
しかし、今回の場合は不自然な点が見受けられた。
イヴ「……ねぇ、ギャリー」
ギャリー「ん? どうしたの、イヴ」
イヴは会場から離れていくトラックを指差す。
イヴ「あのトラック、どう思う?」
イヴの言葉に、ギャリーだけではなくメアリーとウォルターも視線を向けた。
イヴのいうトラックに見られる不事前な点は三つ。
ギャリー「………ランプが、点いてない…」
一つ、夜にもかかわらずランプを点灯していない。
まるで周りに気付かれないように。
メアリー「……ナンバーを、隠してる……」
二つ、車のナンバーに黒い布を被せて隠していた。
まるで追跡を断たせるかのように。
ウォルター「………めちゃくちゃ遅ぇな…」
三つ、速度制限を大幅に下回るスローペースで走行していた。
まるで運んでいる物を傷付けないために注意を払うように。
イヴ「……不自然だよね」
ギャリー「ていうか……、もうあれしかないわよね…。120%間違いなく」
ウォルター「まぁ、奴らに完全犯罪は向かないことは分かったな」
各々が口々に感想を呟く中、メアリーは咄嗟にトラックを追いかけ始めた。
イヴ「……あッ、メアリー!!」
ギャリー「……予想はしてたわ。あの子のことだもの、当然の行動よ」
ウォルター「ったく、ちょろちょろと突っ走りやがって」
ゲルテナの作品として生きていた頃があったからこそ、メアリーは見逃すわけにはいかない。
その気持ちを痛いほど分かってあげられる三人は、先に走り出したメアリーを追って更にトラックを追いかける。
そこに積まれているはずの、ゲルテナの作品“ミルククラウン・ドレス”を取り戻すために。
ハロウィンの仮装パーティーが開かれていた会場から数キロ先。
イヴたちは何とかトラックを見失うことなく追跡に成功したものの、辿り着いた場所を見て首を傾げた。
イヴ「……廃工場、跡地…?」
ギャリー「正確には、その資材置き場だったところ、かしらね」
ウォルター「どっちにしろ、廃工場の一部には変わんねぇよ」
工場の周りを歩きながら、メアリーを先頭にイヴたちは散策を始める。
トラックに追いついた時、既に中は空っぽの状態だった。
ギャリー「トラックの中。あの様子じゃ、人も何人か同乗してたみたいね」
イヴ「やっぱり、あの大きな作品は少人数じゃ運べなかったんだね」
そんな会話を続けている内に、工場内の一角から数人の話し声が聞こえてきた。
メアリー「……ッ!? ここだ……」
イヴ「…じゃあ…、入る?」
ギャリー「それしか選択はないわよ」
イヴたちはゆっくりと廃工場の資材置き場の一角へと足を進めた。
そこに広がっていた光景は……。