とある禁書の二次創作

□Lucifer 〜Fallen angel〜
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 イヴたちが生まれるよりも何千年も昔。

 あの世の監獄、界境大監獄にてマモンがホムルを作り出してから数百年後のことだ。

 天使が住まう世界、天界にて大きな事件が勃発した。



 神の御使いである天使が、神に成り上がろうと反旗を翻したのだ。



 生まれながら強大な能力と才能を併せ持っていた天使の主犯によるものだったが、主犯者の天使の弟と、当時の三大天使の力によって事件は解決した。

 罪を犯した天使は“堕天使”として悪魔の住まう世界、魔界に堕とされた。







 空気が淀み、湿度も高い。

 呼吸することが苦痛であるような濁った世界。

 空は常に曇っており、大地は見渡す限り干涸らびていた。

 ここは魔界。

 悪魔たちが住んでいる世界。

 とある一軒家の前で、一人の少女が放心状態で倒れていた。

シアル「…………」

 非常に際どい三角ビキニだけを着た幼女で、背中から黒い翼が生えている。

 しかし、その翼は悪魔を思わせるコウモリのようなものではなく、カラスのような羽根で包まれた形をしていた。

 まるで、天使の翼が黒く染まっただけのようにも見える。

シアル「………」

 まぁ、実際に間違いではない。

 彼女は元・天使であり、罪を犯して堕天使となった。

 純白だった天使の翼も漆黒に染まり、カラスを思わせる今の姿に成り果てたのだ。

シアル「……」

 堕天使の少女、シアルは自分の行いを考え続けていた。

 それは後悔ではなく、どうして上手くいかなかったのだろう、という疑問でしかない。

シアル「……間違ってなかったはずよ…。なのに……何で…」

 犯した罪は“反逆罪”。

 天使の身でありながら、存在自体が曖昧な神様に成り上がろうとして、天界の天使たちを敵に回したのだった。

シアル「ただ…、みんなが平等に幸せになることを…、望んでただけなのにな……」

 計画は失敗し堕天使となった今の自分には、既に気力が失われていた。

 この先、自分はどうなってしまうのだろう。

 そう思っていた時だった。



???「おい、邪魔や」



 一匹のケンタウロスが話しかけてきた。

 視線を向けると、そのケンタウロスは姿こそ伝説上の通りだったが、腕や四本の脚が不自然に筋肉質だった。

 まるで腕と脚だけ熊のようだ。

シアル「……何?」

???「何? やないわ、ボケ。そこ俺ん家やねん。退けや」

 先程からシアルが倒れていた一軒家の前。

 どうやら、その一軒家の主が帰ってきたらしい。

シアル「……普通は手を差し伸べるものじゃないの? 目の前に女の子が倒れてたら」

???「知るか」

 ゲシッ、とシアルを軽く蹴飛ばして退かし、ケンタウロスは家の中へと入っていった。

 “ベルフェゴール”と書かれたネームプレートが、扉の開閉と同時にギィギィと揺れていた。







 一言で言うなら異臭。

 ベルフェゴールこと、ベールの部屋の中は異臭と汚物で満たされていた。

 掃除など一度も行われた形跡がなく、片付けなどされた様子がない。

シアル「……悪魔って不潔なのね。よくこんな場所に住んでられるものだわ」

ベール「待てや、ボケが。何を普通に入ってきてんねん」

 堂々と家宅侵入を行ってきたシアルに、とりあえずツッコミを忘れないベール。

シアル「私としては、そのエセ関西弁を何とかしてほしいんだけど?」

ベール「やかましいわ、帰れや」

 と、言いつつも摘みだして追い出そうとせず床に横たわるベール。

 シアルも言うことなど聞かずに、汚らしい部屋を見渡してから呟いた。

シアル「……“洗浄”」

 その瞬間、ゴミ山は一瞬で消滅し、部屋中の汚れは一瞬で溶けて消えていった。

 洗い物も新品同様にピカピカになり、備え付けの棚にキッチリと収まっていく。

 散らかり放題で足の踏み場もなかった床も、塵も埃もないほど綺麗に片付いていた。

ベール「………ご苦労さん…」

シアル「貴方、いい性格してるわね」

 まるで当たり前のように、感謝の言葉はなかった。
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