期間限定駄文小説部屋
□恋した人魚
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「なぁ、」
夕暮れの綺麗な放課後に彼は、こう言った。
「俺、好きな人ができた」
『…で?』
「…で?、はないだろ」
物凄い不機嫌にさせてしまった佐久間に、心の中だけでごめんと謝って、取りあえず相手が誰なのか聞いた。
それによると、相手は隣のクラスの美人さん。所謂モテ子だった。
ショコラ色でお菓子みたいにふわふわした髪。色白で触れたら壊れてしまうんじゃないかと錯覚するほどきめ細かな肌、くりくりしてて、宝石を埋め込んだかのような瞳。同性である私でも笑顔を振り撒かれたら見いってしまうものだった。そんな子が佐久間は好きなのだ。
「実は俺、ずっと前から好きだったんだ」
『…そう』
「で、明日告ろうと思う」
その言葉に一瞬、頭が追い付かなかった。彼は今、何て言った?告白、するですって?震える手を思わず握りしめた。
『でもあの子、他に好きな人いるみたいだよ』
諦めて欲しい。その一心で私は咄嗟に偽りを吐いた。
「本当か…!?…でも、それでも伝えておきたいんだ」
照れ臭そうに笑う佐久間。
あぁ、ごめんね佐久間。私、嘘をついた。彼女、好きな人なんか他にいないわ。あの子も佐久間の事好きみたいなの。
でもね、この私の愛より重い人なんて、きっと世界中を探したっていないわ。だから、あの子は辞めておいといた方がいいよ、って言えば君は解ってくれるのだろか。
翌日、佐久間はあの子と付き合う事になった。私はこの時程、過去を悔いた事は無いわ。