番外編
□真紅色に想いを馳せて
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『佐久間、』
「なんだ?」
『サッカー、やらないか?』
「あぁ……え?」
雲一つない晴天。少し蒸し暑さを感じる今日も俺は玖苑の居る病室に来ていた。いつもの様に話していつもの様にいちご・オレを飲む玖苑。その玖苑がストローから口を離した瞬間口から出た言葉がこれだ。いや普通にマズいだろう。
「お前、本気で言ってるのか?」
『ああ。』
表面上では冷静にみえるが、その瞳は早くやろう‼と言わんばかりに輝きに満ちている。犬に例えるなら今まさに尻尾を激しく振っている事だろう。おいこら、ボールを持ってスタンバイするな。
『だってこないだ、佐久間が自分が見える所でだったらやっていいって…、』
「いや…確かに言ったが、俺とやるっつったら絶対激しく動くだろお前。」
『本気でやらなかったらつまんないだろ?』
「いや…一応お前怪我人だからな?」
そう、いくら傷の治りが早い玖苑でも怪我人という事に越した事はない。そもそも、本来なら俺が居ようが居まいがサッカーをやってはいけない身体なのだ。ここでもし良くなってきている脚が悪化してしまったら元も子もない。俺は肩で溜め息を一つ吐くと、ベッドの上でちょこんと座って居る玖苑の手からボールを奪った。
「そういう訳で、俺とのサッカーは当分お預けだ。完全に脚を治してからにしろ。」
そう言うと玖苑はお気に入りの玩具を取られた子供の様に頬を膨らませ、キッと俺を睨んだ。
『自分の身体は1番自分が知ってる。だから、大丈夫だっ!』
ボールを取られても諦めず、それどころかめげずに俺に食ってかかってきた。その様子をみるに、相当俺とサッカーがしたいらしい。その好意はとても嬉しいのだが、やはり一番に考えなければならないのは玖苑の身体だ。ここで、引き下がる訳にもいかない。
「医者から外出許可どころか絶対安静をもらっているのにか?リフティングだってこっそりやっている状況なのを忘れているわけじゃないよな?」
『うっ……。』
「病院側から退院許可が出るまでの辛抱だ。我慢しろ。」
『退院するまでかっ?!』
「当たり前だ馬鹿。」