I say mya-o

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もわもわと湧く湯気の中、俺達は横に並んで湯船に浸かっていた。先程の性別詐称ドッキリ☆事件(さっき考えた)から、お互い一言も喋らず、ただただじっと座っていた。濡れた髪から滴り落ちる水は幾度となく湯船に波紋を描き、特有の音を発しながら空間を支配した。



俺はそれを目で追いかけながらこの場をどう切り抜けようか、冴えない頭を叩き起こし、あれやこれやと考えていた。しかし、元々頭脳派ではない俺に良い案等思い付く筈もなく、27個目の水滴が波紋を作る頃には打開策を練るのを諦めていた。もう頭も洗わずに風呂から出てしまおうか、半ば諦めかけていた。その時だった。



「君ってさ本当にドが着くほどの阿呆だったんだね」



『はぁ?』



突然された阿呆宣言。
うっわ、なんだコイツ。うっぜ、まじうっぜ。



「まさかこの俺を女呼ばりする奴がまだ居たなんてね。そんな古臭い呼び方、当の昔に滅びたと思ってたのに。まぁ、俺が可愛いのは解るけど」



『自分で言うなよ』



ほんとコイツ自尊心高すぎ。キモいを通り越して最早尊敬するよ。どうしたらそんなに自分を大好きになるんだか。



「事実じゃないか。というか君本当に俺を知らないわけ?会った時から反応薄いからまさかとは思ったけど…」



『悪いが俺はこんなナルシ野郎の名前を耳にした事が無いな』



「失礼な奴だね、じゃあヒントをあげようか」



そう言うと濃緑色の髪をさらりと掻き上げ得意気に笑った。その仕草は、ひょっとしたらその辺の女子よりも色気があるのかも知れないが性格が性格なだけになんだか無性に殴りたくなる。



「俺はあの神童、バダップ・スリードに次ぐ天才的頭脳と格闘能力を持ち合わせている」



『バダップ・スリードの次にって……もしかしてお前があの万年二位の?!』



「つくづく失礼な奴だね。けど、残念ながらそうだよ。俺がそのミストレーネ・カルス。というか、知ってたんじゃないか」



『いや、どっかで聞いたことある名前だなとは思ってたけど男って聞いたからお前じゃないと思って…』



「まぁ、俺を女と間違えるくらいだからそう思うのも無理ないか」



ふぅ、と小さな溜め息を一つ吐くと、奴はもう一度髪を掻き上げながら湯船から上がった。プラスチックの椅子に座るとシャンプーボトルに手を伸ばし、白くとろりとした液体を綺麗なその手の上で踊らした。








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