I say mya-o
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しゃわしゃわと頭と髪を丁寧に洗うのを見ながら俺はなんだか申し訳無くなった。女扱いしちゃったり、本人に言われるまで誰なのか解んなかったし。思えば思う程気持ちは沈んだ。
『あの、さ…ミネストローネ、ごめん』
掠れた声でそう言うと奴は不機嫌な顔で俺を睨んだ。
「君さ、謝る気ないでしょ」
失礼な。俺にだって罪悪感を感じる事は出来るんだぞ。だから謝ったというのに。
「ミストレ」
『は、』
「俺の名前。ミストレーネ・カルス、だからミストレ」
ああ、成る程。そういう事か。
『ん…じゃ俺はシグヲで。君、とかやだ…からさ』
なんだか自分で言っといて恥ずかしくなった。湯船に口を沈めると気を紛らす為に息を吐いて音を立てた。ぶくぶく。
なんか、コイツ……良い奴かも。はっきり言って俺は友達と言う奴がエスカバしかいない。だからエスカバ以外にこういう事するのは、照れるけど、嬉しい。凄く嬉しい。自尊心高いし、ナルシストだけど。でも、
『へへっ……』
嬉しいもんは仕方がない。
思わず溢れた笑顔を見たミストレが気持ち悪いって言ってきた。……やっぱ失礼な奴。
謹慎を命じられた翌日、カーテンの隙間から漏れた朝日と可愛らしい目覚ましの音に起こされた。あの風呂の後、一気に疲れが出た俺は寝室に行き倒れ込むようにベッドに潜り込んだのだ。
ベッドの脇に置いてある目覚まし時計を一旦止め、上半身だけ起こすと欠伸びを一つ。まだ重たい瞼を擦った。あぁそういえば、昨日髪乾かさずに寝ちゃったんだっけ。弄ってみるといつも以上に絡まっていた。これは鏡で確認する必要もない、確実にボンバーヘッドだ。
ふと、目線を下げると膨らんだ布団が目についた。心なしか布団の中が温かかった訳はこれか。
『ミストレ、起きろ』
「…ん」
肩を軽く揺するが瞼を余計に固く瞑るだけで起きる気配は全く無かった。おい、軍人なんだから普通、気配だけで起きれなきゃ不味いだろ。
そういえば最初部屋に入れた時もそうだったが、コイツは人のベッドを私物化してるに違いない。いつの間にかちゃっかり枕も取られてるし。俺は溜め息を吐くとミストレを起こさないように寝室を出た。
リビングに行くとソファーに腰を掛けながらTVを観ているバダップの姿があった。内容については俺からしたらつまらない物だった。俺の気配に気がついたのかバダップがTVを観るのを止め、俺の方を見た。
「起きたか」
『おはよ、お腹すいてる?』
「あぁ、少しな」
『今作るから待ってろ』