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□風を感じて
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毎日が充実していて、毎日が戦いだったあの夏の日。
あれから何年の月日が経っただろう。
たとえリアルワールドとデジタルワールドの時間の流れが一緒になったとしても、俺たちデジモンと人間であるヤマトたちが関われる時間は少ないものだから。


だから俺は、記憶の糸を一生懸命に引っ張って、ヤマトのことを思い出す。
ヤマトの暖かさを。
ヤマトの優しさを。


──………。


目を閉じて、培った神経を研ぎ澄ませば。
ヤマトの吹いた、あのハーモニカの音色。
風がそっと、俺の毛皮を撫でて、懐かしい音を届ける。

「ガブモンっ」


どうやら、風はもうひとつ届けてくれたようだ。

「パタモン、」


パタモン。
俺から見たらまだまだ幼いこいつも、一緒にあの夏を過ごした大切な仲間。

「どうしたのガブモン?うたた寝?ふて寝?」
「違うよ」


全く、何処でそんな難しい言葉を覚えたのやら。
ちょっと苦笑いをしたら、ちょっと顔を膨らませて、可愛い。

「ぼくはね、タケルのことを思い出しに来たんだ」


にこにこ笑顔で話すパタモンが、ちょっと、ほんのちょっとだけ羨ましい。
俺もパタモンみたいになれたらな。

「タケルとは、しばらく逢ってないけど…ここにね!この、タケルと別れたこの場所に来ると…タケルのあったかい気持ちを思い出せるんだ」


真っ直ぐ、前を見据えるパタモンは、きっと俺なんかより、ずっとずっと大人で。

「ガブモンも、ヤマトのことを思い出しに来たの?」
「いいや…」


多分俺の方が子供だから、俺は子供を演じ続ける。



じて



僕は風に、嘘を吐く。



END

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