短編集

□飴が欲しい
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『ねぇねぇ白蘭。飴が欲しい』




唐突に言ってきた屋敷の居候兼僕の恋人、夜宵

彼女は生粋の甘党で、僕にも負けず劣らずマシマロが好き


そんなマシマロ一筋だと思っていた彼女が、飴を欲しがった




「夜宵チャン……浮気っ!?」

『違うし。飴が欲しいの』

「うそ……夜宵チャン、浮気者……っ!!」

『女々しいから』

「マシマロ嫌いになったの?」




そう言って手元のマシマロをひとつ、指でつまんで差し出す

彼女はそれを、そのまま僕の指ごと自分の口に含んだ





『ひはひははひほ?(きらいじゃないよ?)』





もふもふとそれを食べながら、僕の問いに答える彼女






「……じゃあ、何で飴なんかに浮気したの?」

『浮気じゃないって』

「浮気だよー……僕というマシマロがありながら…」

『白蘭、お前はマシュマロだったのか』

「え、違うの?」




そう素朴な疑問を投げかけると、ため息を吐かれた




『じゃあ何?私ってマシュマロが恋人?』








……あ




「違うよ、僕が恋人」

『白蘭はマシュマロなんでしょ?』

「さっきやめた」

『おい。マシュマロ大好きじゃなかったのか』

「夜宵チャンのほうが大好き」





勢い任せに話してると、急に夜宵チャンが真っ赤になった


……あれ、僕さっき何って言ったんだっけ?





『…ばかびゃく。はやく飴持ってこい』


「え、何か僕悪いこと言った!?」

『天然タラシが。スパナから飴貰ってきてよ』






急に出てきた知り合いの名前


一瞬だけど、僕は動きを止めてしまった





「…スパナくん?」

『うん。スパナがよく食べてるあの飴が食べてみたいの』










まだ赤みを帯びてるその顔で、



少しふて腐れてるようなその顔で、



お願いされたら









「分かった」









って、言うしかない









天然タラシなのは、夜宵チャンもなんだけど











(貰ってきたよー)
(…待ってる間にマシュマロ全部食べちゃった。ごめん)





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