短編集

□シスコンブラコン
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今日は僕の誕生日

一緒に住んでる夜宵が、昨日僕の為にビターチョコケーキを作ってくれてるのを知ってる

でも、僕には仕事があった



「……大体、僕の誕生日なんだから草壁が頑張ってもいいと思う」



そう呟きながら、仕事をこなすべく並中に向かう

草壁に僕みたいな権限がないことくらい知ってる

でも、僕は夜宵との時間を大切にしたい




並中の応接室。僕の仕事場

指定席の机に山積みにされてる書類を見て、萎えた

やだ。仕事やだ。帰って夜宵のビターチョコケーキ食べたい

そうは思うが、帰ると夜宵が怒る

…仕方ない、速攻で終わらせよう




そう心に決めて2時間と45分後

山は見事平地になり、帰れるようになった

外は夕方の手前あたりだ。まだ時間はある

書類をすべて草壁に渡し、家へと走る




帰ったらまず抱きついて夜宵を補給しよう




一心不乱とはこのことだろう

帰りに少し見えた草食動物の群れも、見逃した

帰るのが遅れるから






見慣れた扉の前、「ただいま」と言いながら戸を引くと、ぱたぱたと駆け寄る足音





『おかえり、恭弥っ』

「ただいま夜宵。いい子にしてた?」

『何歳だと思ってんの。当たり前でしょ』




いつもより上機嫌な夜宵

とりあえずそんな夜宵に僕は抱きつく





「………ふぅ、夜宵補給完了」

『いつもお疲れ様。ねぇ、こっち来て?』





そう言いながら僕の手を引く

そして、僕をリビングに連れてきた






「…何?」

『恭弥、今日誕生日でしょう?』

「そうだけど…」

『私ね、頑張ってケーキ作ったの!!』



……知ってる

そう口に出そうとしたけど、やめておいた




「へぇ、それは楽しみだね」




そう言って少し微笑むと、夜宵も笑みを返してくれた





『甘くない方がいいかなって思って…』





そう言いながら差し出すそれは、昨日夜宵が作っていたビターチョコケーキだ

あれはやっぱり僕の為に作ってくれてた

そう思うと、とてつもなく嬉しかった




それを一口含む

ほろ苦い中にも、甘さがある















「………さすが、僕のだね」




『ありがと、恭弥お兄ちゃん















シスコンブラコン
















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