短編集

□嫌ってくれるまで
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「夜宵、僕は君が好きだよ」



そんな彼の言葉は、何度耳にしただろうか










出会いは夏

偶然彼の側を通りかかった私が、怪我した彼を手当てした

彼は彼に怯えない私を不思議に思い、近付いた

決して怯えてない訳ではない

でも、怪我人を放置出来る勇気が無かっただけなのだ

それなのに、なぜか彼は私に惹かれた


その気持ちに気付いたのは出会って数週間だったのだろう

いきなり、さっきみたいに告白してきたのだ







『…うん、何度も言うけどね?』

「知ってる。彼氏居るんでしょ」

『そうなの。私には黒曜に彼氏が居るの。恋人なの』

「そいつより幸せにするから」




そういう問題ではないのだ

私は黒曜の彼を愛してる

同時に彼も愛してくれてる



目の前の彼…雲雀君が嫌いなのかと聞かれるとそうではない

雲雀君は好きだ。友達として






『…何回も言うけど、私は雲雀君好きだよ』

「じゃあなんで僕を選ばないの?」

『……黒曜の彼は、骸は愛してるの』





そう言うとむくれる

可愛くない訳ではない

いや、可愛い


でもこの感情は、“弟にしたい”という感情

“恋人”ではないのだ




雲雀君に期待をさせると、雲雀君が辛い思いをするだけなのに







「僕、嫌ってくれるまで諦めないけど?」








そうやって、私が突き放せない事を言う

ダメなのに、構ってしまう






私が嫌われるしか、ないのかな?







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