『…なんでもう解散したんだよ!!』
あれからが早かった。
解散した後、別室で上層部のみの会議が開かれた。
でも手がかりが何もない、ということで話はまとまっていき、あっという間に解散していた。
このメンバーをまとめていたツナさんは凄いんだって、改めて実感した。
でもだからって…俺の意見くらい聞いてくれてもいいだろうに…。
『…でさ?俺が挙手で意思表示しようとした途端だぜ?』
「ああ…。」
『みんなして立ち上がって、今日の会議は以上!各々何か成果を上げるよう努めよ!みたいなさぁ?』
「うん…。」
『そりゃタイミング掴めなかった俺も悪いし?なりふり構わず言っときゃよかったとは思うけどさぁ?』
「そうか…。」
『……ねぇ雫、話聞いてる?』
「あ?あぁごめん…。で何だっけ。」
そう言いつつも、携帯を触る指は止まらない。
そりゃ愚痴を聞くだけでいいと言ったのは俺の方だが…ここまで生返事だと切なくなる。
『…俺の愚痴に生返事しちゃうほど何か重要な事?』
「いや…別に大したことはしてねぇよ。」
『嘘。そういうときって大体大切な事してる。』
そうやって言い寄ると、ため息をひとつ吐く雫。
そして目の前のテーブルに携帯を置いた。
「ほら、大したことはねぇ。話聞いてやるからもう一回話せよ。」
『もう一回?結構愚痴だらけだけど…雫怒んない?』
「愚痴は省いて話せ。」
『あっはい……。』
それから晴さんとの出会いや、晴さんの持つ特殊な炎の力など。
俺の知っていることすべてを雫に話すと、「少し調べてくる」とかなんとか言って帰ってしまった。
『…みんなしてさ、俺の話聞かな過ぎだと思わねぇ?レオン。』
1人寂しくレオンに一方的に話しかけた後、傍に置いてあった水を口に運ぶ。
晴さんの事も雫の事もツナさんの事も考えずに、俺は寝ることにした。
翌朝、激しい頭痛と共に目が覚めた。
身体を起き上がらせようとすると、身じろぎすら出来ないことに気付く。
きつく縛られた両腕両足、押さえられたようにして開かない瞼。
耐えきれぬ頭痛に、内臓がかき回されるような感覚。
現状を理解するので精一杯だった。
どうにかして瞼を開き、ベッドサイドを見る。とそこには、
「……。」
じいっ、と俺を見ている、
今屋敷のみんなに心配をかけている張本人。
『…っ、な…さん…?』
彼が、そこに立っていた。
14主人の帰館と失踪執事
(彼は、いつも通りの彼だった。)