私のたからもの。
それは、部屋にたくさんいるぬいぐるみたち。
両親共働きで、一人っ子。
一人で寂しくないようにと、両親や祖父母から貰った。
小さな頃から最近のまで、全て部屋に飾ってある。
おかげさまで、ぬいぐるみに囲まれてないと、寝れない体質にまでなってしまった。
『…あれ?』
いつも通りのはずの部屋で、私は異変を感じた。
『ない…?』
今の恋人から貰った、大切なぬいぐるみ。
そこまで大きくはないけれど、可愛いテディベア。
二人セットで、私と彼を表してるみたいなぬいぐるみ。
『テディ……どこ…?』
部屋中を探しても見つかる気配はない。
今日動いた範囲を一生懸命探した。
それでも、テディたちは顔を出してくれなかった。
『て、でぃ……。』
ほぼ諦めた私の頬を、涙が伝う。
すると急に、後ろから名前を呼ばれた。
「あれ、夜宵?…こんなとこでなにしてんの?」
『……。』
会いたかったけど、会いたくなかった人が来た。
「…何、何か探し物?」
何も言ってないし、顔も会わせてないのに。
図星で肩を揺らしてしまった。
「…今日は何の探し物なわけ。」
いつも私がものをなくしてるみたいな言い方。
否定を出来ないのが悔しい。
でもだからって、このままの状態だと、何も変わりはしないから。
『……テディ。』
「テディ……って、あの、王子が渡した?」
『……うん、テディが…迷子になったの。』
「迷子…。」
『わたしっ、部屋っ、探し、たっ…。』
「そんで見つかんなくて、外まで出てきたのかよ。」
振り向かずに頷く。
「…いいよ、テディはまた王子が買ってやるって。」
ぽんぽん、と私の頭に刺激を与える彼。
その振動も重なって、私の涙が再び流れる。
「明日探して、見つかんなかったら街に行こうぜ。」
『…っうん。』
ぬいぐるみ
(あら、ぬいぐるみってこれの事かしら?)
(何で持ってんだよオカマ)
(洗濯物に紛れ込んでたみたいなのよ)