短編集

□ぬいぐるみ
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私のたからもの。

それは、部屋にたくさんいるぬいぐるみたち。



両親共働きで、一人っ子。

一人で寂しくないようにと、両親や祖父母から貰った。

小さな頃から最近のまで、全て部屋に飾ってある。

おかげさまで、ぬいぐるみに囲まれてないと、寝れない体質にまでなってしまった。



『…あれ?』



いつも通りのはずの部屋で、私は異変を感じた。



『ない…?』



今の恋人から貰った、大切なぬいぐるみ。

そこまで大きくはないけれど、可愛いテディベア。

二人セットで、私と彼を表してるみたいなぬいぐるみ。



『テディ……どこ…?』



部屋中を探しても見つかる気配はない。


今日動いた範囲を一生懸命探した。

それでも、テディたちは顔を出してくれなかった。



『て、でぃ……。』



ほぼ諦めた私の頬を、涙が伝う。



すると急に、後ろから名前を呼ばれた。




「あれ、夜宵?…こんなとこでなにしてんの?」

『……。』



会いたかったけど、会いたくなかった人が来た。




「…何、何か探し物?」



何も言ってないし、顔も会わせてないのに。

図星で肩を揺らしてしまった。



「…今日は何の探し物なわけ。」



いつも私がものをなくしてるみたいな言い方。

否定を出来ないのが悔しい。



でもだからって、このままの状態だと、何も変わりはしないから。




『……テディ。』

「テディ……って、あの、王子が渡した?」

『……うん、テディが…迷子になったの。』

「迷子…。」

『わたしっ、部屋っ、探し、たっ…。』

「そんで見つかんなくて、外まで出てきたのかよ。」



振り向かずに頷く。



「…いいよ、テディはまた王子が買ってやるって。」



ぽんぽん、と私の頭に刺激を与える彼。

その振動も重なって、私の涙が再び流れる。



「明日探して、見つかんなかったら街に行こうぜ。」

『…っうん。』









ぬいぐるみ












(あら、ぬいぐるみってこれの事かしら?)
(何で持ってんだよオカマ)
(洗濯物に紛れ込んでたみたいなのよ)




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