『ねぇ骸、今日はなにをするの?』
僕の椅子に座り、平然とした顔でそう言う彼女。
名前は夜宵。
「…特に何もしませんが。」
『またチョコ食べてー、お昼寝してー、ツナに怒られる…の繰り返し?』
バカにしたような、それでいて愛嬌のある笑顔。
「…夜宵さん。」
『なに?いつもみたいに夜宵でいいのにー。』
けらけら笑う姿も好きだった。
「…いえ、なんでもありませんよ。どうせ貴女もチョコを食べるのでしょう?」
『うん!よくお分かりで!』
「今日はとってもいいチョコを貰いましたので、一緒に食べましょうか。」
そういうと、頬を少し赤らめて笑う。
僕は、その笑顔が好きだったんだ。
『ふー、やっぱチョコにはココアだねー。』
極度の甘党な彼女は、甘いもの×甘いものは日常茶飯事だった。
チョコとココアを一緒に食べる光景も見慣れたものだ。
「…決して悪いとは言いませんが、限度というものがあるでしょう。」
『ぶー。甘いものは正義なの!』
よく意味の分からないことを言うのも、懐かしい。
…そう、懐かしいんだ。
「……もう、そろそろ良いでしょう。」
『ん?どしたの?』
「…こっちももう、限界なんです。」
『何、骸どこか痛いの?』
「違います。…夜宵、貴女は一体誰なのですか?」
そういうと、わけが分からないという顔をする。
僕もわけが分からないのに。
「僕の知っている夜宵は……3年前に事故に合って死んでます。」
それなのに、ひと月前ほどに僕の前に現れて。
最初は幻覚だとか思ってた。けど、幻覚じゃなかった。
綱吉にも雲雀恭弥にも、夜宵は見えていなかったけれど、確かに夜宵は夜宵だった。
気付いて、どれだけ嬉しかったか。
彼女が戻ってきた。それだけで僕は嬉しかった。
「だけどもう、だめなんです。」
『何が、だめなの?』
「貴女がもし、実体のある霊だとしたら。あなたは成仏できないままだ。」
誰にも分からなくても、このまま過ごせたら、と何度も思った。
夜宵が消えてしまえばきっと、僕はまた堕ちてしまうだろう。
でも。
「僕は輪廻を生きてます。来世でもその次でも、きっと夜宵と巡り合える。
だから、お願いです。どうか、もう眠ってください。」
きっと今酷い顔をしているだろう。
顔をあげたくなかった、夜宵にこんな顔を見せられない。
そう思っていると、頬を手で挟まれ、上を向かされた。
「ふ、」
『……酷い顔。イケメンが台無しだよ。』
「煩いですよ…。」
『…私もね、気付いてないわけじゃなかったの。でも、骸と居ると楽しくてさ。
大丈夫。もう、引き際だから。』
そういうと、顔を近付けられ、額を合わされた。
僕は反射的に目を瞑る。
『…出会えてよかった。また来世も、よろしくね。』
目を開いた時にはもう、彼女はいなかった。
貴女は既に