楽園の夢

□トモダチ
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 さて、視点を変えて少し時間を巻き戻す。
 夜も10時近く、駅前の広場のベンチに、銀は荷物を枕に寝転がっていた。傍らには、金の髪をサイドで纏めてポニーテールにしているのが、やたら似合う異国の青年。銀の額に濡らしたハンカチを絞って乗せてやり、大丈夫か?と声をかけている。


(チッ、女の子の調達を甲斐に任せたのは失敗だったぜ‥‥‥)


 彼は、歳は違うが銀の大学での友人で、今日の呑み仲間でもある。誰かさんの危惧した通り、実質合コンだったわけだが、相手の女子たちがなんというか、がっつり呑みに来た!というタイプの子たちで、正直お持ち帰り、という気にならなかった。また、未成年だから呑まないと言った、今時珍しい銀の真面目さが彼女たちには面白かったらしく、ちょっと目を離したスキにジュースと偽って呑まされていたのだ。おかげで銀は、慣れない酒でふらついて、まっすぐ歩くことも出来ない有様。早々にコンパはお開きとし、女の子や甲斐たちを先に帰して今に至る。


「なあ銀、やっぱ家の人呼んで迎え来てもらおーぜ?お前がこんな状態じゃ、俺も安心して帰れねーしさ」


 友人の呼びかけに、銀はふらふらと起き上がりかける。それを制した金髪の青年は、借りるな、と言って銀の胸ポケットに入っていた携帯電話を取り出した。




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