楽園の夢
□11月11日
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今週最後の講義が終わった教室を、出ようとした銀にスミスが小さな箱を投げて寄越す。
「ポッキー?くれるの?」
「今日のためにたくさん買ったからさ。ジョンとポッキーゲームでもしろよ!」
からかっているとはとても見えない風に、スミスがニカッと笑った。金髪サイドポニーテールの派手目な容貌に、明るい笑顔がよく似合っている。また銀も、幼く純朴な顔立ちに、似つかわしい朗らかな笑顔でスミスに返した。
「うん、ありがとな!じゃ、また来週!」
そのまま銀は教室の外へ、ぱたぱたと弾む足音を残して出ていく。スミスと、その周りで甲斐の三つ子たちが唖然、とした表情をしているのも知らずに。
「‥‥‥おいおいおい、銀のヤツさらっと受け流したぜ〜〜」
「い、意外にオトナなんだな」
おそらく、銀が盛大に照れるものと予想していたのだろう。中虎と黒虎が感心する横で、赤虎が鋭い意見を述べる。
「いや‥‥‥ありゃあ、ポッキーゲーム自体をわかってねぇのかもな‥‥」
三つ子とはいえ、長兄の冴えた推測に、下の二人の目が輝いた。
「それだ!」
「いや、まだわかんねぇぞ!」
賭けるか!?と誰かが言い出し、食券やら今夜のおかず一品やらがノートの隅に書き出される。スミスが覗き込むと、三人ともが『知らなかった』に賭けていた。
「スミス、お前も乗れよ。これじゃ賭けにならねぇ」
「バッカヤロ、負けるとわかってる賭けに誰が乗るかよ」
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