楽園の夢
□11月11日
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金曜の夜、風呂上がり。気分よくリビングに入ったジョンの視界に映るのは、ラグにちょこんと座り込んだ銀の、無邪気な笑顔と上目遣いだった。そして、衝撃の一言。
「ジョン、ポッキーゲームってなんだ?」
ジョンは危うく、近くの壁に頭を打ちそうになった。
(‥‥え、なんのフラグだコレ)
気を取り直し、ジョンは銀の前に腰を下ろす。その時にようやく、銀がポッキーの小箱を手にしているのに気付いた。
「どうしたんだ、銀。いきなりポッキーゲームなんて。そういう菓子買うのも珍しいな」
「買ったんじゃないんだ、学校でスミスがくれたんだよ。ジョンとポッキーゲームしろって」
で、ポッキーゲームって何?と改めて訊く銀の丸っこい瞳に、ジョンは平静を装いながら心の中でガッツポーズをとっていた。スミスの野郎、グッジョブ‥‥!などと思っている。
「‥‥‥それはな、銀」
後でスミスに何か奢るか、などと考えているのは噫にも出さずジョンは、銀が見惚れるような笑みを浮かべてポッキーの箱を手に取った。封を開け、中の小袋を開ける。そして、取り出した一本を銀の口許に差し出した。
「ほら、咥えて」
「ん?ンむ」
「こうして‥‥‥」
「‥‥ッ!?」
ポッキーを咥えた銀の肩にそっと手を置き、ジョンが顔を近付ける。ポッキーの反対側を咥え、銀が驚いている隙にぽしぽしと食べ進み、そして―――
「ん、」
唇が触れあう寸前で、ぽきん、と齧り折った。
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