楽園の夢

□11月11日
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「‥‥と、これがポッキーゲームだ」


 真っ赤になって固まっている銀に、ウインクをひとつ。ジョンが時折見せる、ワルイオトナの顔だ。銀はムッとして、ジョンの胸板をぐっと押し返してそっぽを向いた。


「‥‥銀?」
「な、なんだよ、ポッキーゲームってこんなかよ!ていうか、食べ物で遊んじゃダメだろ!」
「おい、銀?」
「なんだよ‥‥‥。こんなのが楽しいのかよ‥‥」


 バカ、とつぶやいた、銀の拗ねた声。そんなに怒ることか?と最初思ったジョンだったが、その声で察した。銀は、ただ怒っているわけではない。


「‥‥‥銀」
「‥‥なに」
「キスしよう」
「‥‥‥‥は、」


 銀としても、予想外なことを言われたのだろう。向き直ったその一瞬を捕らえられ、力強い腕に肩を抱かれた。


「ちょ、ジョン、」
「するんなら、ちゃんとキスしよう。小道具なんか使わねぇで」
「‥‥‥ジョン‥‥」


 銀の身体や表情から、緩やかに緊張が消える。肩を押さえなくても、きっともう逃げない。ワルイオトナの顔は隠して、ジョンは銀の髪や、頬を撫でた。触れられて銀は、照れくさいような、それでいて心地よさ気なうっとりとした眼差しをするから、ジョンは止まらなくなる。


「悪かったな、銀。お前は、ああいうのを遊びやゲームで出来るヤツじゃないんだった」


 だから好きになったのに、とささやいたら、銀の腕がそろりと伸ばされ、ジョンのパジャマの袖を摘んだ。見上げる瞳に、まっすぐな恋慕の情が映って、愛しい、とジョンは思う。


「‥‥‥‥‥キスしていいか?」
「‥‥‥‥ううん」


 思いがけない拒否の返事に、ジョンの頭の中が真っ白になる。その隙に。







     ちゅっ




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