楽園の夢

□11月11日
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 唇で、可愛いリップ音がした。一瞬だけ、触れるだけのキスを。


「‥‥‥俺から、したくなったから」


 火が出そうなくらい紅い顔をして、銀がはにかむ。ジョンはもう、なんと言ったらいいのか。不意打ちと、嬉しいのと、しあわせなのとで脱力しまくって、銀に寄りかかっている状態だ。


「ジョン?どうしたの?」
「銀‥‥‥お前ってヤツは‥‥」


 なんて最高なんだ、と、強く抱きしめる。ポッキーゲームなんかしなくても、充分刺激的で、ドキドキさせてくれる、ビックリ箱みたいな恋人。素の自分では、とても勝ち目なんてない、とジョンは満足そうに笑った。


「ジョン、くるしいよ‥‥‥」
「ああ、悪ィ」


 少しだけ腕の力を抜けば、銀がホッと息をつく。見つめあって、微笑みあったら、やわらかく抱きあうのは自然な流れ。ここにきてようやく、週末の夜を楽しまなくては、とふたりとも思い出した。


「なあ銀‥‥‥。少し早いが、寝室行かねぇか」
「‥う、うんっ‥‥!‥あ、ポッキー」


 どこやったっけ、ときょろきょろ辺りを見渡す銀を、ジョンはひょい、と抱き上げる。


「わあッ!」
「ポッキーなら明日食え。別に、悪くなりゃしねぇから」


 今は、目の前の自分にだけ集中しろ、と、ニヤリと笑ったジョンはワルイオトナの顔。銀が、その顔に弱いと知っていてジョンは、そんなカオをしてみせるのだ。素の自分では、勝ち目がないから。


「‥‥‥ん」


 抱き上げられ銀が、ぎゅっとジョンの身体にしがみつく。風呂上がりのいい匂いがしてジョンは、早くその肌に触れたくなった。



 リビングに放り出されたポッキーも、もう忘却の彼方。ジョンはとっくに、目の前の銀にしか関心がないのだった。




end.
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