楽園の夢

□ある休日
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「‥‥‥まだこれからじゃないスか?」
「あ?」
「俺だって相手がたまたま幼馴染みだってだけで、出逢いが遅かったら女を取っ替え引っ替えしてたかもしれません。だいたい、まだ枯れるような歳じゃねぇでしょう」
「まあなあ」
「もしくは、自分でも気付かないうちに誰かに惚れてて、だから他じゃダメなのかもしれないっスね」
「おいおい、ずいぶんロマンチストなんだな」
「イタリア男っスから」


 ニッと不敵に笑って、Gは煙草を灰皿に埋めて立ち上がった。


「お客さん、いつも独りっスよね。大事なひとが出来たらお連れ下さい」


 1杯サービスしますよ、と軽く手を挙げて、Gはオアシスを出て行った。ジョンは薄く笑い、その言葉忘れんなよ、とその背中を見送る。眺めてみれば、ちょうど連れがスーパーから出てくるところだったらしい。
 まるで最初からわかっていたようなタイミングに、ジョンは感心する。彼らは二言三言交わし、というか何かしら軽口をたたき合っているようで、じゃれあいながら自然な動作でGは荷物の大きい方を手に取った。そんな彼と、寄り添い歩く連れも、やはりジョンは知っている。
 Gと一緒にBARで働く、金髪の青年。Gが、ジョットと呼んでいた。そういえば店で話をした時、彼らは幼馴染みだと言っていなかったか?そしてGは今さっき、大事な相手を幼馴染みだと言ってなかっただろうか。




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