楽園の夢

□あなたのいない夜
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 ジョンが出張で不在の夜、招待を受けて赤目の家に泊まりに来た銀は、哲心を始め2〜3人の子供たちと並んで布団に入った。最初はしゃいでいた子供たちも、寝息を立てる頃は布団もほこほこ。
 すっかり目が覚めてしまった銀は、そろ‥‥っと布団を抜け出し、子供たちの寝相を軽く直して部屋を出た。慕われるのは嬉しいけど、寝苦しいのは困るな、と苦笑しつつ、水を貰おうと台所に向かう。すると途中、縁側の雨戸が開き、月明かりが人の影を作っているのを見た。


「あれ、赤目さん」
「おぉ、どうした銀。ジョンが隣りにいないと眠れないか?」
「‥‥‥なっ!ちょ、なん、知っ!」


 せっかくだから軽く言葉を交わそうと思った銀に、赤目がまさかの不意打ち。ちょっと、なんで知ってるんですか、と言いたかったのに、上手く言葉にならないほど銀は狼狽した。
 ジョンとの関係は、ごく一部の親しいひとたちには隠していないけれど、さすがに毎晩一瞬に寝ているとまでは明かしていないのに。何故知っているんだろう、赤目が忍者だから?などとぐるぐる銀は考えたが、真相はだいぶあっさりしていた。


「なんだ、冗談のつもりだったのに」


 真っ赤になっている銀をからかうように、赤目がくくっと笑う。


「いつも一緒に寝ていたのか。それは寂しいな」
「‥‥‥もう!からかわないで下さい!」


 夜中なのを考慮し、銀は小声で怒鳴る。しかし赤目は悪びれる様子もなく、まあまあ、と余裕で銀をなだめた。


「そう照れるな、銀よ。ひとを愛するということは、素晴らしいことだ。なあ」
「ぅ‥‥ま、まあ、そうですけど」




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