楽園の夢

□あなたのいない夜
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 いきなり話がジョンに変わって、銀はドキッとする。しかしそういえば、もともとジョンの話をしていたのだった。それに、赤目は飄々とした口調ではあるが、おそらくは心からの言葉なのだろう。ジョンの、友人としての。
 だから銀も、きちんと赤目と向き合って応えた。


「見捨てるとか、ないです。だって、俺がジョンを好きなんだから」


 はっきりと言葉にすると、銀はたまらなくジョンが恋しくなる。もしかしたら本当に、ジョンが隣りにいないから眠れないのかも、と思うくらいに。
 そんな銀の応えに、赤目は満足げに微笑んだ。


「それを聞いて安心したよ。なんだか眠くなってきたな‥‥‥。ああ銀、台所に行くならついでに、冷蔵庫に冷えピタが入っているから持っていきなさい。ある程度マシになるぞ。子供は体温が高いからな」


 おやすみ、と雨戸を閉め、赤目は寝室に戻っていった。おやすみなさい、と銀も返しながら、なんだ、やっぱりちゃんとした理由もわかっていたのか、と思わないでもない。しかしもう、いちいち追求する気はなかった。
 ジョンが好き。ジョンに逢いたい。ジョンの隣りで眠りたい。からかわれても嘘には出来ない、確かな気持ちだから。


「‥‥さてと、冷えピタ冷えピタ」


 開いた雨戸から入って来ていた夜風で、いい具合に冷えたが、寝床に戻ればすぐに温められてしまうだろう。雪国の、しかも冬に生まれた銀は暑いのが苦手なのだ。
 ジョンとの寝床は、銀の方が体温も高めでちょうどいい。抱きしめられて離してくれなくても、少し苦しいのさえ歓びに繋がった。
 今頃彼はどうしているだろうか。寝不足顔で帰ってきたら、うんと抱きついて、甘やかしてあげよう。いや、寝不足顔じゃなくてもそうしよう、と銀は決めた。
 ジョンが不在でも、彼のことばかり考える。赤目に心配されなくても、ジョンと離れられないのは銀も一緒なのだった。




end.
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