高遠遙一

□攫ってあげる
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「あの…地獄の傀儡師さんはどうしてここに…?あんなに厳重な警備の目を盗んで、よく来れましたね」

私はずっと気になっていたこと彼にを聞いてみた。

「貴女が悲しげな表情をしていたから来ただけです。それから…」

「それから?」

「貴女をここから連れ去ろうかと」

「……え?」

私を連れ去る?
随分と突拍子もない話。
それでも、地獄の傀儡師さんは余裕たっぷりの微笑みを口許にたたえて私を見ている。

「どうして私を…?」

「貴女のような人をあの家には嫁がせたくないものでして。それならば私が攫ってしまいたいと、そう思いました」

あっさりとそう言って、私に向かって手をさしのべる。

「さあ、後は凜華さん次第です。私に攫われてしまうか、残って嫁ぐ運命を辿るか…」


その時、部屋のドアがノックされた。

「お嬢様、お食事をお持ちしました」

「あっ…」

今頃来るなんて。
でも、もう私はこの二捨択一の状況にさほど困りはさなかった。



「…私を連れ去ってください」


何で私の名前を知ってるのかとか、何で私が嫁ぐことを知ってるのかとか、それは後でいくらでも聞けるだろう。
今はとにかくここから出たい。
彼がそれを叶えてくれるならば、私は彼について行こう。
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