明智健悟
□温もりが意味するのは
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やっぱり何かおかしい。
駅から自宅へと急ぐ凜華は、背後に迫る何かを感じ取っていた。
「(…誰かにつけられてる…?)」
少し足を早めると、後ろから響く足音も早まる。
「(うそ…!)」
ほとんど誰も通らない、暗い夜道。
でもそこを通らない限り、自宅には辿り着けない。
「(笙悟兄…!)」
凜華は心の中で助けを求めた。
自宅までの道のりが長い。
そう思ったのは初めてだった。
「(どこかで表通りに出て、遠回りして帰ろう…)」
嫌な冷や汗が背中を伝う。
「(何でこんな時に携帯の電池なくなるのよー…)」
携帯をそっと取り出して恨めしそうに見る。
だが、表通りまでもうすぐだ。
表通りに出れば、公衆電話があったはずだから、電話して笙悟兄に迎えに来てもらおう。
そう思った。
だが、ストーカーは凜華の向かう先に気付いたのか、突然凜華に向かって走り出してきた。
「きゃあっ!」
驚いた凜華も慌てて走り出す。
だが、うまく走れず結局捕まってしまった。
「はっ、なしてください…!」
「君、如月凜華ちゃんだよね…!ずっと見てたんだ……君可愛いから僕の家においで…可愛がってあげる…ふふ…」
当人の力は強く、凜華がいくら抵抗しても離さない。
その時、凜華の頭にある光景が蘇り、即座に携帯を握った。
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