高遠遙一
□花火大会
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「急がないと花火始まっちゃいますよ!」
助手席に乗っている凜華が高遠に向かって叫ぶ。
「分かっています。しかし凜華、貴女がずっと売店で迷っていたからですよ、こんな時間になったのは」
運転している高遠は前方から視線を外さずに答えた。
二人は今まで動物園に行っていたのだ。
「だってペンギンのマスコット可愛かったから…!」
「はいはい、分かりました。とにかく自宅まで急ぎましょう。もう会場は混んでいるでしょうから」
高遠は一気にアクセルを踏んで、凜華の家へと急いだ。
15分後、高遠たちの車は凜華の家に到着した。
「ちょっと待ってて!」
ばたばたと凜華が車から降り、鍵を開けに行く。
「ふむ…凜華の家に入るのはこれが初めてでしたね」
きっと入った瞬間凜華の優しい香りがするんだろうとか、凜華の部屋はどんな風になっているんだろうとか、いろいろ考えてしまう自分がいた。
「…いけない」
これから花火大会なのに、違う目的を持ってしまいそうになる。
「さすがに凜華に怒られてしまうでしょうね」
「高遠さん、上がっていいですよーっ!」
準備が終わったらしい、凜華が玄関からひょっこりと顔を出して呼んでいた。
「はい、今行きます」
ひたすら我慢だと念じながら凜華の家へと入っていった。