高遠遙一
□あの時から
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「…私を殺しに来たのね」
そう、あれは半年前のことだけど。
「…知ってるのよ、貴方のこと。高遠さんって言うんでしょ?」
「───よくご存知で」
冷ややかに答える高遠の手には、鋭い光を放つナイフがあった。
「私を殺すように依頼されたらしいじゃない。依頼者が話してくれたわ」
凜華は椅子からゆっくりと立ち上がると、高遠に近付いた。
「……そうですか」
「貴方の手からは逃げられないだろうし、私ももう逃げたくないの」
死の恐怖に怯える毎日なんて。
滑稽過ぎて飽きがきた。
「私を殺せばあなたの仕事は終わるわ」
「……」
────。
60、59、58…とテレビがカウントダウンを始めた。
「…もうすぐ年が明けますね、高遠さん」
ただ付けているだけのテレビを眺めて言う。
「今年ももうお終いですか。あっけないものです」
「…あの時は私を殺しに来たのに、生かしてしかも側に置くなんて」
あの時のことを思い出して、凜華が笑う。