江戸っ子奮闘記

□第八章 村長の悩み
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「よし、棒と接着剤はこれで揃ったね。あと一息だ」


「あれ、まだ何か必要なんですか?」


「透き通った石が必要なのだけれど、なかなか見つからないね」


「それって例えばガラスとか宝石みたいなものですか?」


「大体そんなイメージで問題ないよ。少し削ったりしても壊れないものがいいね」


「さて、どこを探したものかな。村の中にはそれらしきものが見当たらなかったが…」


「お姉ちゃーん!何してんの?」


「あら、エノキちゃん…ってずぶ濡れじゃない!このままだと風邪引いちゃうわ」





捜索に難航しているとエノキちゃんが声をかけてきた。

その姿は滝行でもしたのかと思われるほど水が滴り、可愛いキノコヘアーがへたってしまっていた。





「ダイジョウブなの!エノキ体じょうぶなのよ」


「変わった物を持っているね。ちょっと見せてくれるかな?」


「これのこと?」





エノキちゃんが持っていたのはまさにあたしたちが探している透明な石、水晶だった。

純度も高くキラキラと輝いている。

実はあたしはこう言った鉱物が好きだったりする。

よく無理矢理連れていかされる発掘現場でたまに見つかる水晶を眺めるのがあたしの楽しみである。

もっとよく見ようとエノキちゃんに近付くが全力で守ろうと水晶を後ろに隠してしまった。





「わぁ、綺麗!エノキちゃんいいなー!」


「これって水晶ですよね。先生が言っていた透明な石ってこんな感じのものでいいんですか?」


「素材としてはまさにうってつけだ。一体これをどこで?」


「だ、だめなの!エノキがきけんをかえりみずあぶない橋を渡って手に入れたしゅぎょくのいっぴんなの!じいちゃんのことは教えてあげるけどエノキの宝物はヨウジンなの!!」


「おやおや、また用心されてしまったようだね」


「いや、全部言っちゃってるけど」


「橋って、この橋を渡ったの?」


「こ、この橋じゃないかもなのよ!この橋かもしれないけどゼッタイ見つからないからね!!」


「水晶があるのは間違いなくこの先ですね…」





みんなで風に揺られている天然物のその橋を見た。

それは朽ちた木が横になり至るところに穴が開いている橋と言うにはあまりにも心許ないものだ。

とりあえず冷や汗が止まらない。

水晶、見たい、めっちゃ見たい、でも…これは……





「あ………」


「どうしたんですか、レイカさん?」


「ああああたし!ささ、さっきもらった骨とか整理してるからみみみみみんなは水晶頑張って採ってきて!!じゃ!」


「レイカ!」





先生の声が聞こえたが問答無用で広場まで走った。

いやおかしいでしょ確かにミストハレリの件を彷彿させるような橋でトラウマみたいに足が生まれたての小鹿状態になったけどそれだけのせいじゃないよ!

いくら地元の住人が使ってるといってもあんないかにも壊れますよアピールした自然が生み出した天然の何の保証もない橋をあの大人数で渡れるはずがない。

しかしあの先生がいる手前、本能的に逃げ出してしまったがみんな無事に渡っただろうか…





「彼らなら大丈夫さ」


「!」





急に不安になりその場を行ったり来たりしていると声をかけられ顔を上げればサーロインさんがいた。

おい、マジかよ、この人と2人でみんなの帰りを待ってないといけないのか?





「高所恐怖症…ではないな。ボストニアス号でも普通のようだったし」


「不安定なつり橋に若干のトラウマを抱えてるだけです。それにあんな橋を渡る方が正気の沙汰じゃない」


「はは、確かに」


「サーロインさんも一緒に行かなくていいんですか?たぶん今頃訳のわからんナゾとか出てきてますよ」


「ナゾも興味深いが私には君の方が興味深いものでね。それに見知らぬ土地に女性を一人にするのは英国紳士として放っておけないからね」





あと私はサーハイマンだ、とおまけを付けてきた。

サーロインさんの言葉にあたしはイボガエルの骨を1つ取り出した。

そして様々な感情を込めてへし折った。





「似非英国紳士は!一人で!十分だ!っつーの!!」


「これは手厳しいな…あとレイカ君、それ以上骨を折るのはちょっと…」


「こうした方が組み立てるの楽しくなるんじゃないっすかねぇ!」


「………」





サーハイマンはレイトン達が早く帰ってきてくれることを心の底から願った。
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