江戸っ子奮闘記
□第八章 村長の悩み
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しばらく骨を折っていると先生たちが帰ってきた。
あの橋、壊れなかったのか…
「おかえりー」
「レイカさん、あの橋全然恐くなかったですよ」
「ふーん、あんなに怯えてたルークがそんなこと言うんだぁ」
「レ、レミさんがスキップして揺らすからじゃないですか!」
「何それ行かなくて大正解だったわ」
「博士、ありがとうございました」
「い、いや、いいんだ。それより水晶は採れたようだね」
ルークがこれです!と持っていた大きな葉っぱの袋を開き、それをサーロインさんと覗きこんだ。
中には水晶がいくつか入ってあってキラキラしている。
口では行かなくてよかったなんて言ってしまったがやっぱり行けばよかった。
…いや、あの橋渡るくらいならこれで十分だな。
水晶も余ったやつもらえばいいし。
これで材料は全て揃ったので目的であるお祭り会場へ再び向かうことになった。
会場に着くとステージでは相変わらず村長さんが椅子に腰掛け、村人たちがそれぞれの面白いことを披露している。
どうやらまだ村長さんは笑っていない様子。
あたしたちがステージに近付くと村人たちはササーッと村長さんへの道を開けてくれた。
またサーロインさんの臭いがしたのか、村長さんはスンと顔をこちらに向けた。
「フム…誰か来たのか?」
「村長さん、ごきげんよう。先程お邪魔した旅の者です」
「…覚えとらんのう」
「村長さん、僕たちのこと全然覚えていないみたいですよ。大丈夫でしょうか?」
「そのナゾもまとめて解いてみせるよ。今から作るものでね」
先生とサーロインさんはあるモノを作る為に村人の何人かに役割を与え始めた。
なんだかワクワ◯さんの教室みたいになってるぞ。
そんな様子に隣にいる小さなゴ◯リが名乗りを上げて参加していった。
「どうして教授と博士はお面作りを村の人にも手伝わせてるのかしら?」
「それは、次から作るときにあたしたちがいなくても大丈夫なように、だよ」
「私たちがいなくても?」
「うん。だから材料もわざわざこの周辺で調達できるものを選んだんだ」
「レイカさんはあれが何なのか分かってるのですか?」
「まぁね。出来てからのお楽しみってやつだけど」
「えー?教えなさいよー!」
レミはあたしの肩を掴み容赦なくガクガクと揺さぶってきた。
言いたくても脳がシェイクされて言葉を発せられない。
意識をギリギリ保っている内に○クワクチームが目当てのお面を完成させたようだ。
先生が村長さんにお面を渡し顔に装着するよう言うと村長さんは訝しげにその仮面を顔に装着した。
「ごきげんよう、村長さん。私の顔が見えますか?」
「おぉ…なんじゃお前たちは!変な格好じゃのう!!ほー…ほっほ…ほわっはっはっはっは!!」
お面を被った…いや、メガネをかけた村長さんは先生を見て腹を抱えて大笑いしだした。
その様子に固唾を飲んで見守っていた周りの村人たちが大喜びして村長さんの近くに駆け寄ってきた。
「この村の人は、メガネを見たことがなかったんですね。先生たち、村長さんの目が悪いっていつから気付いてたんですか?」
「博士がお祭りに参加したとき、村長さんが博士の言った内容について詳しく聞きたがったのを覚えているかい?」
「はい、ええと、なんていうか…博士がちょっと恥ずかしそうでしたね」
「私とルークがやったこととその次に参加した博士がやったこと、2つの芸には決定的な違いがあったのさ」
「『見るもの』と『聞くもの』か。見えていないものに反応はできないからね」
「じゃああのラフレシアも…」
「見た目は派手な花ではあったけれど村長さんの目にははっきりと見えていなかったんだ」
「確かに目が悪かったら臭いもしない、色も分からない花に気付いたりなんかできませんね…けど、それなら村長さんはどうやって村の中を歩いていたんですか?」
「村長さんが頼りにしていたのは鼻で感じる『匂い』だったのだろう」
「ヒトヨさんが広場で作るご馳走と、奥さんが家で作るご飯の匂い、それが村長さんの道しるべになっていたんだ」
「それで道が分からなくても匂いを頼りに帰って来れたんですね」
先生の解説も終え、村の問題も解決し一件落着。
村長さんが笑って大喜びの村人たちが各々面白い芸を披露して本来のお祭りを楽しんでいるようだ。