江戸っ子奮闘記
□第八章 村長の悩み
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「てか村長さん笑わせたからエッグってもらえるの?」
「あ、そういえばそうだったわね」
「すっかり忘れてました」
「本当にもらえるかな…なんか先祖代々受け継がれてます感半端ないけど…」
「おぉ、そうそう。あんたがた、これが欲しいんじゃろ?くれてやるわい」
「えぇ…」
村長さんはほれとエッグをサーロインさんに手渡した。
いや、もうちょっとなんかあるだろ!
先祖代々受け継がれたものでこれを巡って種族同士の争いがあったがワシの一族は数多の死線を潜り抜け守ってきた代物じゃ…とかさ!
あまりの軽さにエッグを受け取ったサーロインも戸惑っている。
「エッグを私たちに…村長さん、よろしいのですか?」
「確かにこれはワシの宝じゃった。面白くもない祭りの中、心の慰めになった卵じゃ。けどのう、このお面をつけたらやっぱり村の連中は面白くて気のいい連中だと分かったんじゃ。もうワシは寂しくないぞい。この卵は好きに持っていくとええ」
「これ、大事なものなんじゃないんですか!?太古より守り続けてきた宝なんじゃないんですか!?」
「いんや?たまたま地面に埋まっていたそれに躓いて、腹が立ったから食べてやろうと煮たがどうやら食べれそうになくての。触り心地がええからとっといただけじゃ」
「………」
「ご厚意、ありがたく頂戴します」
村長さんにお礼を言ったが盛り上がった村人たちに村長さんが連行されてしまい伝わったかどうか定かではないがこれ以上祭りの邪魔をしては申し訳ないと、この地を後にすることに。
こうしてエッグを手に入れたあたしたちはレイモンドさんの待つボストニアス号へと戻ってきた。
「お帰りなさいませ、皆様。首尾はいかがでございましたか」
「村長さんの好意でエッグをいただくことができました」
「レイトン君やルーク君はとてもユニークな一面を見せてくれてね。あれはレイモンドも見ておくべきだったな」
「旦那様、ご謙遜はいけませんよ。茹で玉子を茹でた孫!なかなか面白うございました」
「…!?」
「旦那様の貴重な一面を目にできてレイモンドは感激の極みにございます」
「レイモンド、どうしてそれを…」
「出航の準備は整っておりますのでいつでもお申し付けくださいませ」
レイモンドさんはスッと操縦席へ移動していった。
ただ者ではないと思っていたがレイモンドさんは相当できた執事さんのようだ。
「レイモンドさんって忍者か何か?」
「新しいジョークを考えなければならないな…」
「これ以上自ら迷いに行くなよ」
フムと真剣に悩みだしたサーロインさんはほっといてあたしはソファに腰を掛けた。
隣に座っていたアーリアはサーロインさんから渡されたエッグを穴が空くのではないかと心配になるぐらいガン見し続けている。
流石に眼球が乾いてしまうと声をかけようとしたら突然アーリアが立ち上がった。
「先生、博士…私、何か…思い出せそうです」
「記憶が戻ったのかい、アーリア」
「はい…荒れ果てた砂漠が、見えます…かつてここには何もなかったみたいです。アスラント人はここを自然豊かな土地に変えて、聖閃石を置いたようです…」
「つまりこれだけのジャングルはアスラント人が作り出したと?」
「そうみたいです…これ以上は、記憶が霞んでしまうので思い出せませんが…」
「アスラント人の行いがこうして現代に残っているとは感慨深いね」
「そうだな。それじゃあ、そろそろ出発しようか」
「砂漠をジャングルにって相当進んだ技術だね」
「興味が出てきたかい?」
「いや、興味はない」
次の目的地へ向けて浮かび上がったボストニアス号。
キノコの屋根が見えなくなった時、余った水晶をもらうのをすっかり忘れていたことを思い出し、なんとも空しくなったので不貞寝することに決めた。
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